グインの『スクリーン&ポップ』が渋谷を牽引
サンロッカーズ渋谷と新潟アルビレックスBBは第9節を終え、9勝8敗で並んでいた。加えて今節は、連戦終了時点の順位が『オールジャパン』の出場と組み合わせを決める材料になる。リーグ戦の中でも一つの『節目』となるタイミングだ。そんな時期に組まれた中地区のライバル対決は、期待通りのクロスゲームになった。
両チームの外国籍選手オン・ザ・コート数は渋谷が[1-2-1-2]で新潟は[2-1-2-1]。しかし新潟は第1クォーターのアドバンテージを生かせず、13-13で最初の10分を終える。庄司和広ヘッドコーチが「インサイドを狙い過ぎてしまって、重くなってしまったところがあった」というスタートの10分間は、クリント・チャップマンが期待通りに10得点を挙げたものの、ボールがスムーズに動かず、他の選手にいい形が生まれなかった。
第2クォーターは渋谷が4点のリードを得て、33-29で終える。このクォーターに輝いたのはアールティー・グイン。ガードとの連携で入れ替わりながらボールを受け、外角からスリーポイントを放つ『ピック(スクリーン)&ポップ』の形が面白いように成功した。グインは208cm120kgのビッグマンだが、今日はアウトサイドからのシュートで大きく貢献。グインはこのクォーターだけで3ポイントシュートに4本チャレンジし、3本成功させている。
庄司ヘッドコーチが「グイン選手のところをケアする練習をして、スクリーン&ポップのところは徹底していたんですが、かなりの修正が必要。ゾーンのところもそうなんですがプランと違うところが出てしまった」と言及するように、新潟にとっては苦い時間帯だった。
しかし新潟は第3クォーターに入ると渋谷に迫り、残り1分57秒には遥天翼の3ポイントシュートで逆転する。渋谷もその後に追いついたが、52-52とタイスコアのしびれる展開で、試合は最終クォーターに入る。
ビッグマンの巧みな連携で勝負どころを制す
第4クォーターに入ると、渋谷はアイラ・ブラウンの活躍で少しずつ点差を拡げる。渋谷は試合を通してグイン、ブラウン、満原優樹の連携が光った。満原は個々の連携について「(DFが)寄ったらアイラが単純にさばく、さばいて(満原が)ドライブしたらアイラにまた合わせるというのができていた。だから(アイラが)引き付けてアールティー(グイン)がフリーで打てたりして、アシストも自然と増えた」と説明する。
ブラウンは第4クォーターだけで10ポイントを挙げ、試合を通しても23ポイント、8リバウンド、7アシストを記録。スティールも6つと、ディフェンス面の貢献も大きかった。
しかし新潟も最大9点差から徐々に追い上げていく。残り1分19秒に畠山俊樹が3ポイントシュートを決めて71-77と6点差に迫ると、残り52秒には五十嵐圭が3ポイントシュートを狙ったところでファウルを受ける。五十嵐はこのフリースローを3本とも成功させ、スコアが74-77と3点差に詰まる。
その後、両チームが2点ずつを加えた残り6秒。五十嵐は再び3ポイントシュートを狙うが、これは惜しくもリングを叩いてしまった。「最後の3ポイントシュートを決められなかったのは個人の責任。あそこで決めていれば延長まで行けたと思いますし、チームに勢いを与えられたのに……」と本人も悔いる、この試合最大の山場だった。
新潟はファウルプレーに望みを託すが、渋谷はこの直後のフリースローを伊藤駿が2本とも成功。渋谷が新潟を81-76で、2連戦の初戦をモノにした。
五十嵐「クロスゲームにできたことは悪くない」
渋谷は3ポイントシュートを25本中13本という高確率で決め、26本中8本にとどまった新潟を上回った。また新潟にとって26本は『打ち過ぎ』の本数でもある。庄司ヘッドコーチはこう悔やむ。
「シュートがアウトサイドに偏ってしまった。ペイントを制圧しようと話して送り出したのに、外で打たされてしまった3ポイントシュートが非常に多くなってしまった。渋谷さんの特徴である3ポイントシュートを、渋谷以上にウチが打っているというのはゲームプランからズレている」
ただ五十嵐が「内容的には全然良くなかった中で、クロスゲームにできたことは悪くない」と振り返るように、新潟も粘りを示した。戦術的な修正は必要だが、27日の再戦に向けて期待を持てる地力も証明した。
一方で渋谷のBTテーブスヘッドコーチは勝因をこう説明する。
「ここ最近の試合はディフェンス面で考えさせられるところがあったけれど、そこで自分たちの狙いができた。普段に比べてディフェンスを重点的にやって、相手のスカウティングをしたので、それも勝因だった。あとは自分たちが積極的にボールを前にプッシュするという形ができた。そこから速攻の中で点が取れたことも勝因」
初戦を取ったのは、狙いをしっかり表現した渋谷だった。