田口成浩

平均20得点から無得点「開幕節と昨日で天と地を味わった」

秋田ノーザンハピネッツはBリーグ第2節にアウェーでサンロッカーズ渋谷と対戦。初戦はターンオーバーから自滅し70-81で敗れたが、第2戦では最後まで主導権を渡さずに95-88のハイスコアゲームを制し、SR渋谷の開幕4連勝を防いだ。

後半のスコアは同じ(52-52)だったため、数字だけを見れば前半の差が勝敗を分けたと言える。SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチも「最初の5分で決まった」と話し、立ち上がりの悪さを敗因に挙げた。それでも、SR渋谷は追いかける展開が最後まで続く中で、何度か1ポゼッション差に迫るシーンもあった。だからこそ、伊佐ヘッドコーチは「2、3本ビッグショットを決められてしまいました。僕が読み違えて、流れを持ってくることができなかったです。選手は100%指示通りにやってくれました」と、選手をかばうように敗戦の責任を負った。

2、3ポゼッション差で試合が推移したことを考えれば、すべてのシュートが『ビッグショット』とも言えるが、16分のプレータイムで15得点を記録と、効率の良いプレーを見せた田口成浩のパフォーマンスは特筆すべきだ。田口は少ないシュートチャンスでしっかりと3ポイントシュートを沈め、さらにオフボールムーブからゴール下のイージーシュートを決めるなど、要所で存在感を発揮した。

今シーズンの田口はレバンガ北海道との開幕節の2試合で平均20得点を挙げ、絶好調の状態でSR渋谷戦に挑んだ。しかし、第1戦では放った6本のシュートをすべて外し、無得点に終わった。それでも、迎えた第2戦では日本人選手トップとなる15得点を挙げてチームを勝利へ導いた。

田口は「開幕節と昨日で天と地を味わった」と、直近の3試合を振り返った。現在もその傷跡が痛々しいが、SR渋谷との初戦で無得点に終わったのは右目付近を負傷したことも影響していた。

「力が入っていたのもありましたが、これ(傷)があってリズムも狂ってしまいました。試合に出たいし、早く打ちたい感情もある中で、プレータイムもなくなるフラストレーションもありました。その結果、メンタルの弱さが出たかなと。自分にイライラしていたところがあったので、メンタルの強さを持たなくてはと思いました」

それでも、第2戦では終始落ち着いたプレーを見せ、強豪を撃破する立役者となり安堵の表情を浮かべた。「昨日はチームとしても個人としてもひどかったので、勝つことができてまずはホッとしています」

田口成浩

「フルさんがいるおかげで気持ち良くできています」

田口はここまで4試合を終えて平均13.8得点、3ポイントシュート成功率57.1%と、秋田オフェンスの中心を担っている。シューターのイメージが強い田口だが、今シーズンはスコアラーとしてもやっていくつもりだ。

「昨シーズンは移籍してきたということで、チームにアジャストできるように良いシュートを打っていこうと考えていました。でも後半戦からは点数をもっと取りに行けと言われて、どんどん打っていくようになりました。今シーズンは『最初からどんどん行くよ』って気持ちがありますし、練習中からやっています。点を取りに行くメンタルに変わって、確率も良くなっていますね」

田口は昨シーズンに千葉ジェッツから移籍してきたが、千葉在籍ラストシーズンはプレータイムが平均10分を切り、3ポイントシュート成功率は26.5%でキャリアワーストの数字となるなど、精彩を欠いていた。そのタイミングで古巣の秋田に戻ってきたこともあり「最初からガンガンやって、『おいおい』って思われるのも嫌でしたし(笑)。遠慮は正直にありました」と、一歩引いた状態でプレーしていたことを明かした。

その遠慮が払拭されたこともあり、好成績を連発している田口は「私、ガンガンやりますよ!」と饒舌だ。それでも、現在の好パフォーマンスは自分だけの力ではなく、古川孝敏の存在も大きく影響していると語った。

「自分がダメでもフルさんがいるから楽にプレーできますし、フルさんがいないともっとプレッシャーがかかってくるのかなと。セカンドで出ていますけど、ファーストオプションもたくさんあって、そういう役割を与えられたら思い切り打てますよね。フルさんがいるおかげで気持ち良くできています」

『秋田の顔』だったころのメンタルを取り戻し、偉大なベテランの存在を自分の力に変えている田口。そのオフェンシブなマインドを貫き続けることができれば、「おいさー」が木霊する機会は増えるはずだ。