機動力のあるビッグマンを中心に、好守でミスマッチを狙う

テレパシーで通じ合っているかのような選手間の共通意識により、複雑で高度な戦術を武器にしていたラプターズでしたが、選手が入れ替わったことで難しくなった昨シーズン中盤から、突如としてサイズのある選手を並べたビッグラインナップを好んで使うようになりました。新たな選手を連れてくることで従来の戦術に戻すのかどうかが今オフの注目ポイントでしたが、サイズ優先で選手を集めビッグラインナップ継続路線を選びました。

ラプターズのビッグラインナップは単に高さでインサイドを攻め込むのではなく、5人全員が3ポイントラインの外に広がり、ドライブと3ポイントシュートを組み合わせた形が特徴で、戦術的にはスモールラインナップの狙いと大差ありません。ただし、常にミスマッチが生まれる上に、パスカル・シアカムやスコッティ・バーンズがガード並のスキルでドライブを仕掛け、コースに入られても最後は高さで打ち切れるメリットをフル活用しています。

その上で機動力を持ったビッグマンが並んでいるため、ディフェンスではスイッチを繰り返してもカバーリングが崩れることはなく、極めてシンプルな形ながら連携が崩れにくくなっています。ただ、攻守に強力なシステム構成というわけではなく、腕の長さを活用したスティールからの速攻と、シュートミスが起こることを前提にしながらオフェンスリバウンドでカバーしていく戦い方です。

今オフはオットー・ポーターJr.とフアンチョ・エルナンゴメスというシュート能力の高いウイングを補強しました。プレーオフでビッグマン役としてスクリーンを繰り返しながら、外に開いての3ポイントシュートを決めていったポーターJr.と、ユーロバスケのファイナルで3ポイントシュートを連発し27点を奪ったエルナンゴメスは、勝負どころでオフェンス効率を向上させるロールプレーヤーとしての活躍が期待できます。シューター系の選手を求めた補強ですが、サイズの優位性も忘れておらず、ポジションレスなビッグラインナップに適した選手です。

特徴を貫く補強は上手くいったラプターズですが、いくつか噂のあったポイントガードは獲得することができず、フレッド・バンブリートにすべてを託すことになります。元々はバンブリートのケガから始まったビッグラインナップのため、そこまで大きな問題ではありませんが、求めていたテンポを変えられる選手は不足しています。一時的には成功したビッグラインナップですが、プレーパターンもバレてきた中で、シーズンを通して機能するのかどうかが試される新シーズンとなります。