竹内譲次

文=泉誠一 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

レギュレーション変更の影響を一番受けているA東京

開幕前から過密日程が続くアルバルク東京は、タフな10月をなんとか2敗で乗り切った。しかし、月が変わった最初のホームゲームで琉球ゴールデンキングスに連敗を喫する。前節の京都ハンナリーズ戦から早くも3連敗中。昨シーズン、3連敗したのは1度しかない。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは「アジアチャンピオンズカップが影響しており、準備期間がないまま開幕を迎えたことはこれからも響いてくる」と警戒する。週をまたいで5試合が行われる日程も多く、「少しでも後れを取ったらトップに追いつくのは厳しい」と焦りを隠せない。選手たちも疲労が抜けず、馬場雄大が体調不良のため欠場した。

そんな苦しい状況でも、黙々と身体を張り続けているのが竹内譲次である。常時オン・ザ・コート「2」になったことで、日本人ビッグマンの出場時間は軒並み減少している。その中において竹内は、昨シーズンの平均20.6分から24.5分に増やし、ここまですべて先発を任されている。

A東京におけるインサイドのファーストオプションは竹内とアレックス・カークであり、オン・ザ・コート「1」が基本。毎試合、外国籍選手や帰化選手とのマッチアップに身を削っている。

しかし当の本人は「バスケは1on1ではなく、5on5の勝負です。ボールをもらわせる前のディフェンスが大事であり、良い状況判断をしながらすべてのポゼッションで最大限の力を出すだけです」と、黙々と役割に徹する。体格差により守り切れない場面も当然出てくる。「レギュレーションが変わって、一番影響を受けているのがアルバルクだと思っています。結果が出ないのもうまく対応できていないからであり、イコール自分の働きの部分だと思っています」とこれまで以上に責任を感じ、それを全うすべく全力を注ぐ。

竹内譲次

「こいつに負けたくない」という気持ちが力に

年が明ければ34歳を迎える竹内だが、昨今の躍進には目を見張るものがある。しかし、「ここ数年はバスケットの情熱が薄れる時期も正直言ってありました」というのが本音。「体力的な衰えを感じるし、これからずっと落ちていくのかなあ」と、30代に突入したことを機に「自分に期待できなくなった」時期があったそうだ。心身ともに落ち込んでいた竹内の目を覚ましてくれたのは、日本の『希望』となった20歳のライバル、八村塁だった。

「初めて日本代表合宿に参加した3年前から素晴らしい選手でした。今年、日本代表で再会した時には、自分の手が届かない位置まで彼が成長していました。それを見て、『こいつに負けたくない』という気持ちが芽生えてきたんです。代表合宿で彼とマッチアップしながら、『もっと上手くなりたい』、『同じ日本代表のユニフェームを着てもっと日本の力になりたい』と思うようになりました」

さらにもう一人、2人目の日本人NBA選手となった渡邊雄太の存在も、34歳の負けず嫌いな部分に火をつける。

「雄太とはリオ五輪の最終予選で一緒に日本代表としてプレーしましたが、あの時はまだ大学生でした。人間的にも素晴らしく、最終的にはNBAでドラフトされるような選手になれるように頑張ってほしいと思って見ていました。あれから2年が経ち、今年また同じ日本代表のユニフォームを着て一緒にプレーしたら、以前とはやっぱり変わっていました。アメリカでは多少セルフィッシュでも目立たなければいけないですが、そのプレーを練習中から垣間見させてもらいました。これがアメリカで活躍するためのプレーであり、しがみついてでも勝たなければならない執念のようなものを、練習や試合を通して感じました。そういうハングリー精神も大事だなぁって、そういう部分で刺激をもらいました」

突き上げてくる後輩を歓迎し、その競争がモチベーションになる。振り返れば、竹内が主力になったあとは、兄の公輔(栃木ブレックス)と太田敦也(三遠ネオフェニックス)の同い年しか対抗できる身長の選手はいなかった。ようやく若きライバルたちが現れ、同じタイミングでオン・ザ・コート「2」のレギュレーションになったことで、竹内をさらなる高みへと押し上げてくれることだろう。

今月末に迫るワールドカップ予選を視野に、「まずはそこに選ばれることを目標にしています。アルバルクの素晴らしいコーチの下でプレーし続けることが、代表での個人のパフォーマンスにも繋がると思っています」とリーグ戦を通してレベルアップを図っている。

竹内譲次

A東京に必要なのは「我慢強さや忍耐力」

2007年のユニバーシアードで世界4位となった彼らは、『黄金世代』と呼ばれている。205cm(当時)と体格に恵まれたことをその要因に結びつけるのは早計だ。この世代は常に努力をする選手が揃っていた。努力を厭わない選手こそが、天才だと感じている。11年が経ち、当時のユニバメンバー12人中8人が、今なおB1の舞台で活躍し続けられているのも、努力の賜物である。

A東京の次戦は、休む間もなく秋田ノーザンハピネッツとの水曜ゲームがやって来る。負の状況を抜け出すためにも、「我慢強さや忍耐力をもっとチームとしてビルドアップしていかなければいけないです」という竹内。それこそがディフェンスをアイデンティティに持つA東京に必要なメンタリティだ。

「チャンピオンシップに出るのは当たり前。それが始まってしまえば、優勝争いのスイッチが勝手に入るものです。今はまだ深く考えず、チームの勝利と自分自身が成長していくことに毎試合フォーカスしています。一つひとつのゲームを無駄にすることなく、レベルアップの糧にしていきたいです」

アルバルカーズ(A東京ファンクラブ)であれば、机や玄関先などに飾られた卓上カレンダーを毎日目にしていることだろう。そう、11月は竹内譲次の季節である。