ジャマール・マレーとポーターJr. の活躍が大前提

2年連続シーズンMVPという輝かしい個人成績を残したニコラ・ヨキッチは、プレーオフでも31.0得点、フィールドゴール成功率58%、13.2リバウンド、5.8アシスト、1.6スティール、1.0ブロックとリーグ最高の選手に相応しいスタッツを記録しましたが、チームは1勝しかできませんでした。1人のスーパースターだけでは勝てないことを、嫌というほど思い知らされたのです。

オフになるとブルース・ブラウン、ケンテイビアス・コルドウェル・ポープ、ディアンドレ・ジョーダンらを獲得し、弱点であるディフェンス面の強化に動きました。的確な補強で優勝を目標としたシーズンが始まりますが、すべてはケガから復帰するポイントガードのジャマール・マレーと、MPJことマイケル・ポーターJr.が、ヨキッチに次ぐエースとして活躍することが大前提となります。

ポイントセンターのヨキッチを経由するオフェンスは、連続したパスとオフボールムーブが組み合わさり、ディフェンスの死角を突いてフリーのシュートを生み出します。マレーとMPJはパスの受け手として高確率なフィニッシャーとして機能するだけでなく、時にはヨキッチを囮にしたプレーも選びます。2年連続のMVPは素晴らしいことではあるものの、それだけヨキッチにボールが集中していた証明でもあり、実際にヨキッチのボールタッチ数は100回を超えていました。まずは何よりもヨキッチの負担を減らすことが求められます。

ヨキッチのすごみはリーグで最も多くのタッチ数ながら、オフェンスが特定のパターンに限定されない事で、豊富なアイデアと優れたコートビジョン、そして必殺の『ソンボル・シャッフル』により個人技でも決め切れることで、どんなに対策を立てられてもプレーチョイスを変更することで攻略してしまいます。

爆発的な身体能力ではなく、スキルと判断力でリーグを支配してきた類まれなスーパースターは、主力を欠いた状態でもナゲッツを勝たせてきました。そこにマレーとMPJが戻ってきたのであれば、単純に考えてチーム力はアップするはずですが、あまりにもヨキッチが偉大なために「ヨキッチに頼った方が効率が良い」ことになる可能性もあります。ケガ前と同じ水準のプレーレベルを発揮できなければ、迷いが生まれてしまうかもしれません。

充実した補強で優勝が見えてきたナゲッツですが、新加入選手とケガからの復帰組を合わせれば主力の半分が入れ替わったことになり、しっかりと連携を構築しなければいけません。上手くいかなくてもヨキッチが何とかしてくれますが、それではプレーオフで勝つのは難しいだけに、ある程度のミスを許容してでもマレーとMPJが主導するプレーを取り入れていく必要があります。