「どうやったらお互いの良いところを引き出しあえるかを考えたい」
バスケ女子日本代表は、銀メダルを獲得した東京五輪以来となる世界大会『女子ワールドカップ2022』に挑んだ。
チームが掲げた目標は金メダル獲得。しかし、いざ大会が始まるとグループラウンド初戦のマリ(89-56)こそ快勝したものの、その後はセルビア(64-69)、カナダ(56-70)、フランス(53-67)、オーストラリア(54-71)と4連敗を喫し、まさかのグループリーグ敗退という結果に終わった。
馬瓜ステファニーは、3×3代表として出場した東京五輪後は5人制の代表にも選出され、アジアカップやワールドカップ予選にも出場。このように恩塚享ジャパン始動後は代表チームで多くの時間を過ごしてきた。
それだけに、「やってみないと分からない部分ではあるんですけど、5カ月間みんなで練習してきた結果がこうなったというのは……」と言葉を濁しつつ、「一言で言うと、『難しい』の一言になります。結果こうなったので、悪いところをしっかりと認めて改善していくしかないと思います」と、世界との壁をあらためて痛感させられた今大会を振り返った。
そしてステファニーは「良いところが出なかった」と続けた。「日本の良いところであるトランジションのバスケットやディフェンス、3ポイントシュート。そういうところを出すためにはどうしたらいいのかを、最後までつかみきれずに終わってしまったというのがすごくあります」
もともと世界に比べてサイズで劣る日本は、激しいディフェンスからのトランジション、そしてチーム全員が放つ3ポイントシュートを武器にこれまで世界と戦ってきた。しかし、今大会は堅守を見せても、その流れをオフェンスに繋ぐことができず、気持ちよくシュートを打つためのシチュエーションを構築することができないシーンが目立った。その結果、3ポイントシュート成功率は参加国12チームの中で下から4番目の26.8%に留まり、5試合での総ポイント数でも12チーム中10位となった。
前指揮官のトム・ホーバスは緻密なチームルールを設けて、強い日本を作り上げた。バトンを受け継いだ恩塚ヘッドコーチもホーバスが築いたハードな守備と3ポイントシュートという武器をベースに『選手自身の判断でコート上で表現すること』をテーマに加えてチーム作りを行ってきた。
コーチがいない3×3を経験しているステファニーは「自分で判断しなくてはいけないことは、今まで経験してきました。ただ、山本(麻衣)選手だったりお互いをよく知っている選手同士でやっていた中で、長い期間やってきて培ってきたものが多いのかなと思います。今回、(準備期間が)5カ月という結構長い期間ではあったんですけど、5人制ではお互いの良いところを引き出し合うことが、なかなかできませんでした。自己判断はもちろん、どうやったらお互いの良いところを引き出しあえるかを考えたいです」
「お互いを知ることで良くなる部分もありますが、何をしても通じなかったこともありました。そこを認めて違うことに変えていく、改善していくことも重要だと思います」
「『私がエースだ』という気持ちで向かってくる選手に対して、何ができたかな」
3×3で五輪を経験済のステファニーだが、5人制A代表での大舞台は今大会が初めてだった。平均プレータイムは髙田真希と赤穂ひまわりに次ぐ、チーム3番目の平均20.0分となり、7.6得点、5.0リバウンド、1.4アシストを記録。5試合すべてベンチから出場し、持ち前のフィジカルと機動力を生かしたプレーでリングにアタックして、チームに勢いを与えるパフォーマンスを見せていた。また、シュートは決め切らずともフリースローを獲得するなど、ステファニーの強さを見せるシーンは多々あった。
それでも、チームとして結果を残せなかったことも相まって、「もちろん『やりきったな』という思いはない」とはっきりと語る。「こうやって代表に選んでいただいたことは光栄ですし、大切な経験になると思います。世界のトップレベルで戦っている選手たちを見る機会はなかなかないですし、ここでそういう選手たちとやり合える、ボコボコにされて分かったことがたくさんありました」
「相手が持っている余裕など、そこをどうにか崩していかない限り勝てない。相手のリングに向かってくる気持ちだったり、学ぶことは多かったです。『私がエースなんだ』という気持ちで向かってくる選手に対して、自分たちは何ができたかなと感じます」
もちろんスポーツの世界で求められるのは結果だ。日本代表は東京五輪で結果を出し、多くの期待を背負って挑んだ今大会で決勝トーナメント進出を逃したのは残念でしかない。それでも、ステファニー個人で言えば、まだ23歳と若く、今後は日本代表でも中心選手としてチームを引っ張っていく存在になるはずだ。そんな彼女が今大会で得た学びと悔しさを糧に、今後どんな選手へ成長していくのか。日本代表の歩みとともに注目していきたい。