[CLOSE UP]ヒルトン・アームストロング(千葉ジェッツ)『乱闘男』の汚名返上を誓うディフェンスの職人

2016/11/22
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

「今日は素晴らしいディナーが待っていると思う」

先週末、千葉ジェッツは秋田ノーザンハピネッツを相手に連勝を収めた。その前の仙台89ERSの2連勝と合わせて4連勝で、東地区の3位をキープしている。

秋田との連勝を演出したのがヒルトン・アームストロングだ。2試合を通じて秋田のセンター、スコット・モリソンに自由を与えず、秋田の攻め手からインサイドを奪った。土曜の試合は8得点7リバウンド、日曜は10得点6リバウンドとスタッツは平凡だが、ペイントエリアをガッチリ守る彼の働きがあってこそ、千葉のディフェンスは安定したし、ディフェンスからオフェンスへの良いリズムが生まれた。

日曜の試合、秋田が良い時間帯を作ったのはアームストロングがベンチに下がっていた時のみ。会心の試合を終えた彼は、「チーム全員がハードにプレーした結果だ」と振り返る。

身長は同じ211cmながら、体重は15kg重いモリソンとのマッチアップについては、「とても大きな選手で力強さがあって、身体の使い方を分かっている選手なので、できるだけ彼を気持ちよくプレーさせない場所までしっかり押し出すようファイトした」と語る。

そうは言っても、モリソンを止めるのはそう簡単ではないはず。そのコツは「早い段階でコンタクトしていくこと」と明かす。「彼がボールを受ける前にしっかりと体を寄せて、持ちたいところでボールを持たせないことだね」

持ち味はディフェンスで、決して多くのシュートを放つタイプではない。それでも、ポストアップで攻撃の深みを出す役割を着実にこなしてオフェンスに貢献するとともに、日曜の試合では3本のダンクをお見舞いした。ただでさえ熱い千葉ブースターのテンションをさらに上げる要所でのダンクは、否が応でも印象に残る。

アリーナを盛り上げるためにダンクを狙っているのかと尋ねると、いたずらっぽい笑みを浮かべて「フィアンセから、ダンクを決めないと夕食抜きだと言われていたんだ」と言う。「ファンを盛り上げるのももちろんだけど、狙っていたよ。3回も決めたから、今日は素晴らしいディナーが待っていると思う」

「正直、あの時に何が起きたかはあまり覚えていないんだ」

チームはこれで4連勝。外国籍選手3人を総入れ替えした千葉ジェッツも、開幕から2カ月が経過した今、チームとして仕上がりつつあり、アームストロングも手応えを感じている。「試合をこなすごとにチームのケミストリーができているし、雰囲気も良くなっていると感じている。まだ伸びる余地はあるので、これからも成長できると思う」

2006-07シーズンにニューオリンズ・ホーネッツ(現ペリカンズ)でデビューして以来、NBAレギュラーシーズン292試合出場の実績を誇るアームストロングだが、本人としては不本意な形で日本のバスケットボールファンに名を知られることになった。そう、アルバルク東京との試合での『乱闘劇』だ。

「正直に言うと、あの時に何が起きたかはあまり覚えていないんだ」と、『事件』にはあまり触れたくない様子。「これからはしっかり集中してやっていくよ」と、あくまで先を見据える。

本来は『乱闘劇』ではなくプレーで注目を集めたいところ。出場停止が明けた秋田との2試合で、その一歩をしっかりと踏み出した。アームストロングは自身の持ち味を「ディフェンスの部分」と語る。「ブロックショットが一番だけど、それを狙うことで相手選手を消極的にさせたり、逆にチームメートを鼓舞したり。そういうディフェンスでの働きを見てほしい」

出場停止明けの2試合で好パフォーマンスを披露。雑音に影響されず、本来のプレーができた秘訣をこう語る。「すごくシンプルな話で、バスケットボールをやることに変わりはないんだから、自分のやるべきことだけを意識した。その結果が100%の集中につながったんだと思う」

Bリーグは序盤戦を終えて中盤戦に入る。試合を重ねるごとに調子を上げるチームについては「何かを変える必要はない。チームは正しい方向に進んでいるよ」と語る。「今までやってきたことの精度を上げること、そして全員が自分の役割をこなしていけば、素晴らしいチームになれるよ」

来日から3カ月が経過し、日本での生活を楽しむ余裕も出てきたと言う。「どこに行っても人々は親切だし、すごく居心地が良いよ」

お気に入りの食事は「焼肉」、好きな日本語は「アリガトウ」というアームストロング。彼もチームも、本領を発揮するのはこれからだ。