文=鈴木健一郎 写真=©San-En NeoPhoenix

浜武恭生社長「優勝のためにはチルドレスの獲得が必要」

11月21日、三遠ネオフェニックスがジョシュ・チルドレスの入団会見を行った。

チルドレスは2004年のNBAドラフトで全体6位指名を受けてホークスに入団。ルーキーイヤーからレギュラーシーズン80試合に出場し、4年目にはプレーオフに進出している。以後、サンズやネッツでプレーし、NBA通算391試合出場、平均9.1得点を記録。ギリシャやオーストラリアでのプレーも持つ。

そして今回、シーズン開幕から2カ月というこのタイミングで、三遠への加入が決まった。

三遠の浜武恭生社長は、「優勝のためにはチルドレスの獲得が必要だと判断した」と補強の理由を語る。「旧NBLのチームが上位にいる状況で、より高いレベルでアジャストさせたほうがチームとして成長できる。新しい選手を連れてくれば、良くも悪くも変化が起きます。チームもメディアもファンも、こういう選手が来るということで変化を起こしていかないと。チャレンジしていかないといけない」

三遠が戦う中地区では、昨シーズンのNBL王者である川崎ブレイブサンダースが首位を走っている。三遠は開幕節で川崎に連勝し、ここまで通算3勝1敗と勝ち越しているが、川崎は三遠以外との12試合で全勝。2位の三遠に3ゲーム差を付け、総合力の高さを見せ付けている。特にインサイドは、リーグ最強外国籍選手のニック・ファジーカスを擁して圧倒的な強さを誇る。そのギャップを埋めるための手が、リチャード・ロビーとの契約を解除してのチルドレス獲得だ。クラブとして明言はしないが、ロビーでは越えられない壁を、チルドレスであれば越えられると判断したのだろう。

藤田弘輝ヘッドコーチは、獲得に際して2015-16シーズンに在籍したシドニー・キングスでのプレーを見て「得点能力が高いにもかかわらず味方を生かそうとする姿勢」を確認、チームにフィットするとの確信を得た上で、彼をチームに加えた。

「まだ来日して間もないのですが、最初の練習からチームの流れるようなバスケットの中でプレーしていたので、フィットするのに時間はかからないと思う」と、藤田ヘッドコーチは言う。

「強みはどのポジションでもプレーできる適応能力の高さ」

チルドレスは、「チーム一丸となってプレーする、チームを生かすようなプレーをすることを楽しみにしています」と挨拶。4日前に来日したばかりだが、週末に行われたサンロッカーズ渋谷との2試合には帯同し、チームの戦いぶりを観察した。

その印象については「日本のバスケットボールは非常にスピードのあるスタイルで、良いシューターがたくさんいるという印象があります」と語る。三遠については、「特にディフェンス面でのリバウンド、攻撃面でより速さを生かした得点で、自分がサポートできると感じました」と、すでに自分が入った場合のイメージが出来上がりつつある様子。

「一番の強みはどのポジションでもプレーできる適応能力の高さ。バスケットボール自体を楽しむことができる。素晴らしいパサーやシューターということではないが、どのプレーにおいても質の高いものを提供できるのが自分の強み」と、チルドレスは万能性をアピールする。

その上で、三遠のマッチアップの問題を解消できると彼は言う。「他のチームに比べて少しサイズに劣っているので、自分が小さい選手にも大きい選手にもマッチアップすることで、オフェンスでもディフェンスでも、その問題をカバーできるのではないかと思っています」

今夏に三遠に加入し、ここまでチームトップの平均15.1得点でオフェンスの中心となっているロバート・ドジャー。チルドレスとドジャーは代理人が同じで、それが縁で三遠への入団が実現した。積極的にリングにアタックする姿勢が売りのドジャーの得点力も、チルドレスの加入でさらに引き出されると期待できる。

Bリーグにはたくさんの『NBA経験者』がいるが、レギュラーシーズン通算391試合出場という実績は突出している。開幕からここまで好調を維持する三遠が、さらに上のレベルを目指して今回の補強に踏み切ったことは、Bリーグにとっても大きなプラスになるだろう。鳴り物入りで加入したチルドレスが、三遠の、そしてリーグ全体のレベルを引き上げてくれることに期待したい。