東京オリンピックから8人が入れ替わっても、強さは変わらず
フランス代表とスペイン代表、強豪国同士がぶつかるファイナルになったユーロバスケットですが、タレントはいてもチームとしての連動性の悪さが目立っていたフランスと、1年前の東京オリンピックから8人が入れ替わりタレント不足のスペインという、意外な顔合わせでもありました。
ただ、ファイナルまで進めなかったライバルとの明確な違いは、オフェンス優勢のユーロバスケットにおいて、この両チームはディフェンス力に特徴を持ち、しぶとく勝利をもぎ取ってきたことです。そしてファイナルもお互いのディフェンス力から試合が動きました。
フランスの強みは言うまでもなくルディ・ゴベアを中心にしたゴール下の強さで、この強みがあるからこそアウトサイドでの積極的なプレッシャーを仕掛けられます。ポイントガードのロレンツォ・ブラウンに対して激しいディフェンスを仕掛け、5本の3ポイントシュートすべてを外させました。ゴール下でもゴベアの存在感がビリー・エルナンゴメスを過度に警戒させ、イージーなゴール下でもシュートミスを誘いました。フランスは自分たちの強みであるディフェンスで、最後までインサイドを攻略させませんでした。
ところが、スペインは準決勝まで33%しか決まっていなかった3ポイントシュートを48%と高確率で決めて打開します。特にフアンチョ・エルナンゴメスは、厳しいシュートチェックに遭いながらも高さの利を生かし、9本中7本の高確率で決めて27得点を奪いました。準決勝までとは全く違うオフェンスになりながらも得点を奪う引き出しの多さで、ゴール下に強いフランスのディフェンスを回避したのです。
『フランスの強みを消す』ことを攻守に徹底
そしてスペインはディフェンスでも『自分たちの形』ではなく『フランス対策』が効きました。エバン・フォーニエやトーマス・ヒューテルらガード陣の1on1に手を焼きながらも、アウトサイドには人数をかけてでも止めに行き、インサイドへパスを出させてはカットしていきました。インサイドを固めるのではなく、アウトサイドへのプレッシャーで自由を奪い、そこから出てくるパスコースを読み切っていたスペインのスカウティングの前に、フランスの高さは完全に抑え込まれました。結局、ゴベアは2本のアテンプトしかなく、オフェンスリバウンドも0本と全く機能しませんでした。
12ものスティールを積み上げたスペインのディフェンスは、準決勝まで平均38本のアテンプトがあったフランスの2ポイントシュートをわずか25本に抑え込みました。フランスは後半になると狙われているパスを減らし、ドライブを増やましたが、そこにはウスマン・ガルバが見事なリムプロテクトで立ちふさがりました。フランスの2ポイントシュートは76%という高確率で決めましたが、これは完全に抜ききったイージーシュート以外は打つことができなかった結果です。
ディフェンス力に強みを持っていた両チームですが、相手の良さを消すことではスペインが1枚も2枚も上手でした。第3クォーターにフランスが3点差に追い上げるも、タイムアウトをとったスペインはゴベアをアウトサイドに引き出すオフェンスで一気に2桁リードに突き放すなど、攻守において『フランスの強みを消す』ことを徹底してきました。ある意味でゴベアという分かりやすいタレントを試合から消すのがスペインの戦略だったといえます。
88-76のスコア以上に強さを際立たせたスペインが、ユーロバスケットを制しました。この2カ月間でU20、U18に続いて3つのカテゴリーでのヨーロッパ制覇。U16こそ惜しくも準優勝に終わりましたが、一発勝負のトーナメントであっても確実に結果を残す『勝者のメソッド』は他国を圧倒しています。ガソル兄弟を中心とした世代が終わりを迎えたスペインでしたが、まだまだ黄金時代は続きます。