橋本拓哉

大阪エヴェッサの橋本拓哉は2020-21シーズン途中に右足のアキレス腱断裂の大ケガを負った。この時まさに絶好調のパフォーマンスを見せていた彼の戦線離脱とともにチームは失速し、彼が全休となった昨シーズンも大阪はパッとしないシーズンを送った。昨年3月にケガをして、復帰が見えてきた昨年11月に再び右アキレス腱断裂となり、離脱期間は大幅に伸びた。2022-23シーズン開幕を控えた今も万全とは言えないが、彼は焦る気持ちを抑えて準備を進めている。コンディションが思うように上がらないことに「歳を取ったので」と何度か彼は口にしたが、まだ28歳。プレーヤーとしての全盛期を取り戻す時間は十分に残されているはずだ。

練習復帰初日に2度目のアキレス腱断裂「絶望の一言でした」

──現在のコンディションはいかがですか?

まだ100のうち70から80です。ドクターからはまだ足の可動域に制限があるので、プレータイムも制限されています。

──1年半もプレーから遠ざかっていますが、どんな気持ちで過ごしていましたか?

1回目のケガはチームがチャンピオンシップに進出しようというタイミングだったので、ただただショックでした。チャンピオンシップを戦うチームを見ているしかなかったのはキツかったです。2回目はリハビリを経て、復帰を間近に迎えた時にまたケガをしたので、本当に絶望の一言でした。

入院も含めて自宅待機のような形がずっと続き、全然動けなかったので、身体が鈍ったとすごく感じました。実際に体重が6kg、体脂肪率も10%ぐらい増えました。ベストの時が体重87kgぐらいだったんですけど、一時は93kgぐらいでした。体脂肪率は落ちているんですけど、歳のせいか体重がなかなか落ちないですね。

──バスケができない時間がこれだけ長いと、感覚を取り戻すのにも苦労しそうですね。

そうですね。1年半もプレーしていないので、失ったものがあまりにも多すぎます。これだけバスケから離れたのは初めてだったし、プレーの感覚がなくなっていることを前の練習試合で痛感しました。「足さえ良くなれば」と考えていたので、感覚を取り戻すのがこれだけ大変とは思っていなかったです。

──プレーに必要な動きのキレ云々よりも、そもそもまだ身体が重い感じですか?

それが1年半も何もしないと、身体が軽かった時のことを忘れているんです。「どんなんやったかな?」って感じです。まだ思い切り跳べないんですけど、今はダンクはできなくなってますね。全力で跳ぶことがまた怖いんです。練習を再開してからここまで、まだ100%で走ったり跳んだりするのが怖くてやれていない部分があるので、そこを全力でやれるようにならないとプレーのキレとか試合勘は戻らないですよね。

橋本拓哉

「ニュービルさえ止めれば、という状況を自分が何とかしたい」

──昨シーズンのチームは、外から客観的に見てどんな印象を持ちましたか?

結果が出ていなかったので、見ていて苦しかったです。結局はディージェイ・ニュービル頼りで、相手の目線で言えば「ニュービルさえ止めれば勝てそうだ」と感じていました。だからこそ「自分が出たい」、「歯がゆい」という思いが強かったです。

──今シーズンから新たにチームを率いるマティアス・フィッシャーコーチのバスケはどんなものですか?

新しいヘッドコーチはドイツ人で、メンバーは変わらないですけどバスケは大きく変わりました。完全にヨーロッパのスタイルになったと思います。ディフェンスは強度が高くて、ヘルプの仕方も今までやったことがない特殊なディフェンスですね。まだまだハマっていないのでミスが多くて、言ってしまえばギャンブル的なディフェンス、ヘルプも1人が間違えると全部崩れてしまって失点するのがプレシーズンの試合でもありました。でもハマればすごいので、モノにしていきたいですね。

オフェンスも今までとは違ってスペーシング重視でボールをシェアするスタイルなので面白いです。まだまだ初めてのシステムなのでミスも多いんですけど、全員が共通意識を持てば本当にすごいバスケができると思います。シーズンのどの時期でそこまで行けるかが勝負です。

──ニュービル選手頼りの部分は変わりそうですか?

ディージェイがキーマンなのは変わらないでしょう。理不尽なぐらいシュートが入りますからね。1試合で8本ぐらいと3ポイントシュートのアテンプトも多いですし、それだけ打って成功率が40%を超えてくるのは本当にすごいです。あとはディフェンスも上手いですよね。スイッチも得意ですし、やっぱりキーマンですね。

僕はケガする前、練習での1対1とかですごくディージェイに対抗心を強く持ってやっていたんですよ。早くあのレベルに戻ってバチバチやるのを楽しみたいですし、「ニュービルさえ止めれば」という状況を自分が何とかしたい気持ちもすごくあります。

橋本拓哉

「確率をキープして2桁得点を取りたい」

──もう開幕ですが、橋本選手のコンディションはまだ万全ではありません。今後の見通しは?

アキレス腱は順調にいけば6カ月から8カ月半年で復帰できるんですが、ドクターは「2回切ったんだから今回は慎重に」との判断です。僕自身、やりたい気持ちは強いんですけど不安な気持ちもあるのが正直なところです。ゲーム勘もないのに何ができるのかと考えますよね。ただ、僕にとっては一日一日の練習が大事で、そこで少しずつ補っていかないといけません。

2シーズン前のスタッツを残すのは、今の僕では現実的に無理だと思うんですけど、少しずつでも本来のプレーを取り戻していきたいです。コンディションを上げて、プレーの感覚を取り戻して早く100%の状態で試合に出たいです。

──数字としての目標はありますか?

しばらくはプレータイムに制限があるので、良いスタッツは出せないと思います。それでも3ポイントシュート成功率が40%、フィールドゴール50%以上というのは変わらず意識しますね。その確率をキープして2桁得点を取りたいです。

──100%のプレーを取り戻した時、チームにとってどんな存在でありたいですか?

プレーでチームを引っ張っていきたいとは常に思っています。それに今年で28歳になったんですけど、若手からあっという間にこの年齢になったと感じています。今までは自分のプレーでチームを引っ張ろうと思っていたんですけど、もう年下のチームメートも増えてきたし、プレーとは別の部分でも引っ張っていけるような選手になっていきたいです。

──今シーズンに限らずもっと先まで見据えた場合、プレーヤーとしての橋本選手の目標は何ですか?

Bリーグが始まって7シーズン目ですけど、僕はケガなどで試合に出ていない時期がすごく長いんですよね。でも、だからこそ今は長くバスケをプレーし続けたいです。冗談半分ですけど「50歳までプレーしていたい」とみんなに言っていて、エヴェッサでやれるだけやった後はどのカテゴリーにでもしがみついてでもいいので、ずっとバスケを続けたいです。

──ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

チームは新しいバスケをやるので、機能するまで少し時間がかかると思うんですけど、その間に僕もコンディションを取り戻して、チームが噛み合った時に100%全力でプレーできるようになっていたいです。できる限り早くケガを治すので、その時には僕の3ポイントシュートに注目してください。新しいスタイルにガラッと変わった大阪エヴェッサに期待してください。