ルカ・ドンチッチ

追い詰められ『5分間だけ本気を出した』ように感じる内容に

『死のグループB』を1位通過したスロベニアの決勝トーナメント初戦はベルギーとの対戦になりました。1年前に日本代表も互角に渡り合ったユーロの中堅国が相手となれば、スロベニアが圧倒するかと思われましたが、当時とは完成度が段違いのベルギーはグループリーグでスペインを倒した実力を存分に発揮し、終盤まで接戦が続きました。

ルカ・ドンチッチのステップバック3ポイントシュートが3本続けて決まり、序盤に飛び出したスロベニアでしたが、鮮やかなボールムーブを見せるベルギーは、逆サイドへのキックアウトからコーナーへのエクストラパスを繋いでワイドオープンの3ポイントシュートで対抗します。個人技vsチームオフェンスの構図がハッキリとした展開が続く前半となりましたが、ドンチッチがベンチに下がるとスロベニアのディフェンスが明確に強化され、2クォーター中盤に10点リードまで持っていきました。

やはり両チームには差があると思わせる展開でしたが、ここからベルギーはラッキーな3ポイントシュートが決まり、粘り強くリバウンドに絡んで得点を繋ぐと、スピードに弱いスロベニアのガード陣に対して1on1からのドライブでリズムをつかみ始めました。後半になると、お互いに3ポイントシュートへの警戒が高まり、重たいオフェンスになっていきましたが、ベルギーの高い集中力は切れることなく、アップセットの可能性を感じさせていきました。

そして迎えた4クォーター開始1分、ポストアップからのスピンムーブが決まり、この試合初めてベルギーがリードを奪います。この時、マークしていたドンチッチはスティール狙いで後ろから手を出すだけのルーズなディフェンスで、あまりにも簡単に得点を許してしまいました。初戦からフルスロットルでプレーし続けているエースは、スタミナ的にも限界が近いのかと思われました。

しかし、ここからスロベニアは明らかに集中力を増し、全く別のチームに変わりました。ゆるゆるだったディフェンスは急激に締まり、ドライブで抜かれてもブラッコ・チャンチャーが見事なヘルプでブロックショットで救い、そのまま走り出したチャンチャーがレイアップを決めれば、ドンチッチも身体を張ったポストディフェンスでオフェンスファウルを引き出すなど、ベルギーオフェンスをシャットダウンしました。

オフェンスでもドンチッチがフリースローライン近辺で片腕を引っ張られながら、放り投げたサーカスショットを決めれば、ゴラン・ドラギッチはドライブからマイク・トビーへのアリウープをアシストするなど、逆転されてからの5分間を19-1と圧倒しました。17点のセーフティリードを得てから試合終了までの4分間は、再び6-7とトーンダウンしており、『5分間だけ本気を出した』ようにすら感じる恐ろしい集中力でした。

ドンチッチ、ドラギッチ、チャンチャーの3人はプレータイムが30分を超えており、普通に考えれば4クォーターは体力的に厳しいはずですが、ある意味で適当に流していたようにも見える前半のディフェンスも含め、ギアを上げて戦う余裕を残した戦い方だったと言えます。ドンチッチは35得点、5リバウンド、5アシストと数字の上でも大活躍でしたが、本当のすごさは数字には表れない『集中力』にありました。

ベルギーの健闘はスロベニアの本気を引き出しましたが、本気になったスロベニアはあまりにも強すぎました。16点という点差以上にベルギーがスロベニアを追い詰めた試合でしたが、16点という点差以上にスロベニアとベルギーの間にある実力差を感じる不思議な試合でした。