古川孝敏

秋田ノーザンハピネッツは昨シーズン、チーム初のチャンピオンシップ出場と大きな功績を残した。だが、初戦で激突した琉球ゴールデンキングスには2試合とも地力の差を見せつけられて連敗で敗退。着実な成長を遂げる一方で、目標とする日本一にはまだまだ超えないといけない高い壁があることを痛感させられた。さらなる進化を目指す今シーズンもチームリーダーを務めるのは古川孝敏だ。チームで最も勝利の味を知る百戦錬磨のベテランは昨シーズンで3年契約が満了しており去就が注目されていたが、秋田に残留を果たした。後編では、新シーズンへの意気込みや今後のキャリアについて聞いている。

さらなる成長に向け、秋田の確固たるチームカルチャーを作っていく

──新シーズンは日本人選手の主力は変わらない一方で、外国籍選手は3人全員が変わります。

今までの外国籍選手がどうこうではなく、選手が新しく入ってくることは僕たちにとっては変われるチャンスだと思います。それぞれの選手の良さを生かすことができれば、すごくプラスに持っていける要素です。ただ、秋田は外国籍の個の力頼みのバスケットをするチームではないです。基本的な自分たちのバスケットは変わらず、日本人選手が主体となっていくところは継続していく部分です。それでも3人一気に変わると、一つずつ作り上げていかないといけない部分は多いので、新加入選手たちの力をより生かすためにも、これからもっとしゃべって相互理解を深めていかなければいけないと感じています。

──昨シーズンの課題を踏まえて、今シーズンは特にどこを改善していく必要があると思いますか?

戦術だったり、細かい技術だったりとかいろいろな要素はある中でも、すごくざっくりですが、昨シーズンはチームとして大雑把すぎて粗さが目立っていました。強豪チームに勝つこともありましたが、自分たちがどうプレーすれば勝ち切れるのか。この部分についてどの試合でもみんなが同じイメージを共有し、しっかりとしたケミストリーを築くことができていたかと言われれば、まだ少し難しい感じでした。

チャンピオンシップは本当に細かいところでの差が勝敗を分ける戦いになりますが、そこで勝っていくには高い壁があった。昨シーズンも良い兆しが見えたところはありましたが、例えば自分たちの武器はディフェンスと言っている中でディフェンスのどこが強みでどう戦っていかないといけないのか。細部まで同じイメージを共有して40分間、もしくは80分間を通してできたのか。技術的な部分もありますが、まずは全員がしっかり同じものを描き、自分たちのバスケットをやりきれるようにしていくことです。

──古川選手は、これまでアイシン(現シーホース三河)、栃木(現宇都宮)ブレックスでリーグ優勝を経験しています。そういった過去の経験も踏まえ、秋田はどこまで自分たちの確固たるスタイルができていると思いますか?

それこそ、秋田はチームカルチャーが確立しきれていないと思います。ディフェンスが基本となっていて、実際にディフェンスから多くのターンオーバーを誘発できています。でも、そこから自分たちもターンオーバーをして得点に繋がらないケースも少なくない。それではディフェンスで頑張っているだけで終わってしまいます。

例えばルーキーで加入したアイシンは、自分たちがこうすれば勝てるという1試合を通しての運び方が明確にありました。だから僕は当時新人でしたけど、前半負けていたり、上手くいっていなくとも後半になれば大丈夫という感覚でいられました。栃木でも40分間、自分たちのバスケットを信じてプレーできていました。(田臥)勇太さんという試合をしっかりコントロールしてくれるポイントガードがいたことで、僕は自分のプレーに集中できていた部分はありましたが、大事なポイントを抑えて勝ち切るためにどんなプレーをすればいいのかはチームとしてしっかりできていました。秋田でもこういうチームカルチャー、ケミストリーを作っていかないといけないですが本当に大変な作業です。

古川孝敏

「昨シーズンはCSに出たけど、今シーズンはダメだったというのは最悪という意識」

──そんな大変な作業がある中でも秋田に残留したのは、チーム作りに楽しさを見いだしているからですか?

何よりも日本人がメインでバスケットをして自分たちのカルチャーを作り上げて勝っていけたら最高だと思うからですね。また、これは自分の欲でもありますが、自分が何か影響を与えることができる状況は楽しいですし、秋田の目指すみんなの良さを引き出し合いながら勝っていくことができたら素晴らしいです。さらに今までなかなか結果が出せずにB2降格から再びB1に這い上がってきたチームが優勝できたら地元はより盛り上がる。そこにやりがいだったり、楽しめる要素はあります。

──昨シーズンのチャンピオンシップ出場で、秋田の皆さんが求めるハードルは今までよりも上がってくると思います。

強いチームとは、勝ち続けるチームだと思います。単発で勝っていくだけでは意味がない。昨シーズンはチャンピオンシップに出たけど、今シーズンはダメだったというのは最悪という意識で、しっかり危機感を持たないといけないです。昨シーズンの琉球に負けた悔しい思いは絶対に忘れてほしくないですし、だからこそ自分に対してより厳しい要求をするだけでなく、周りにも厳しく接していくことで、チームとして良いものを作れるように振る舞う必要がある。もともと、そういうのは得意ではないので、これは僕の中ではかなり大きなイメージチェンジをしないといけないと思っています。

──今シーズンは35歳のシーズンとなります。大ベテランの域に達してきた中で、コートに立てるのはあと何年くらいなど意識することはありますか?

全くないことはなくて、いつか自分にも終わりが来るなとは考えますけど、それが直近になるとは全く考えていないです。僕はまだやりたいし、やれると信じています。もちろん若かった頃のようにいかないことは多いので、悩みながら自分の身体を作ってはいます。また、ケガで終わりたくないとか思うことはありますが、もっとプレーを続けていきたい。何よりもバスケットが好きという思いが強いです。

──最後、ファンにメッセージをお願いします。

毎度、同じになってしまいますが、秋田でバスケットをやっていてすごく皆さんに支えられていると感じます。会場だけでなく、プライベートでも声をかけてくださる方もいて、そういった方々のおかげで僕らがコートに立つことができると本当に感謝しています。皆さんと一緒に戦えるのはすごくうれしいですし、皆さんのためにも僕たちはしっかりと結果を残していかないといけないです。昨シーズンはチャンピオンシップに出場することができましたが、それで満足はしていないです。さらなる高みに行くためにも今シーズンも一緒に戦い、時には厳しい言葉をいただいたりすると僕らの励みになります。秋田が一つになって大きな風を起こしていきたいです。