タイリース・ハリバートン

「今になって思えることだけど、あのトレードは僕にとって幸せなことだった」

タイリース・ハリバートンはキングスの中心選手として、昨シーズンの開幕を迎えた。本人もキングス再建を担う覚悟でキャリア2年目のシーズンに挑み、出場した51試合すべてで先発を務め、平均14.3得点、7.4アシストを記録していた。

しかし、彼はシーズン中のトレードで、キングスからペイサーズへと移籍した。NBAにトレードやその噂は付き物だが、彼はキングスの主力として活躍していたため「全く予想していなかった」と、自分が当事者になるとは思っていなかった。当時の彼は突然のトレードに動揺していたが、ペイサーズに移籍後は26試合に出場して、平均17.5得点、9.6アシストを記録し、再スタートを切った。

思いもしない形でキャリア2年目のシーズンを終えたハリバートンは先日、『Basketball News』の取材で、「トレードされる前の僕は、無敵だと思っていた」と昨シーズンを振り返った。「何度かトレードの噂は聞いたけど、僕は良いプレーをしていたし、『実際に彼らが僕をトレードするわけがない』と思っていた。だから、そのことは見ないふりをしたし、心配もしていなかった。でもね、僕は今回のトレードのおかげで、もっと自己認識を持たなければいけないと学んだ。それに自分で思っているよりも、僕は大きな存在ではないと認識するようになったんだ」

こう語った彼は「僕は嘘を言わない。正直なところ、あの時は組織内の全員を恨んだ」と続けた。「組織全体に対する憤りだった。でも、それは僕の未熟さだったんだ。ちょっと面白いことだけど、この間、これまでの後悔や満たされない期待、恨みなどを書き出してみたら、今の人生で思いつく恨みはキングスだけだった。だけど、僕はその気持ちを持ち続けたくないとも思った」

「今になって思えることだけど、あのトレードは僕にとって幸せなことだった。ここでは本来のポジションでプレーできるようになって、自分の能力を発揮できるようになった。これは僕にとって天の恵みだった。うれしかったよ。あらためて、一歩下がって自分の人生を振り返ることで、僕はより大きくなり、より多くの自己認識を持つことができた」

昨シーズンはペイサーズで26試合しか出場できなかったが、チャド・ブキャナンGMは「私たちは彼を中心にチームを構築するつもりだ」とハリバートンへの期待を語った。「私たちは彼が次のレジー・ミラーになることを望んでいる。インディアナポリスのダウンタウンにある建物にレジー・ミラーの壁画を描いたんだけど、いつかこの街のどこかにタイリースの壁画を描くことが私たちの次の夢だよ」

また、ブキャナンGMは「彼はとても謙虚で勤勉で、チームファーストなんだ。それはウチのチームの特徴でもある」と彼の人間性を称えた。「もし彼がNBAレベルの選手ではなかったとしても、GM補佐やコーチ補佐、選手育成のスタッフとして、チームにいてほしいタイプだ。私がNBAで過ごしてきた中で、こう思えるタイプの人は数少ない。彼がもたらす影響力を説明するのは難しいが、私たちは彼が持っている素晴らしい部分をたくさん活用して、彼の周りにできるだけ多くのタレントを配置して、このチームを作っていきたい」

このように球団から大きな期待を寄せられているハリバートンは「目標は、得点源としてもっと快適にプレーすること」と言う。「この夏はドライブの角度やフリースローラインまでの行き方、得点の取り方を考えることが多かった。ただ、一番重要なことは、自分自身を精神的に変化させること。得点源としてもっとアグレッシブになることで、ファシリテーターとしてもっと活躍できるようになると思う。逆に言うと、ファシリテーターとして活躍しながらも、自分のシュートを探していきたい」

開幕からペイサーズの一員として迎えるキャリア3年目の新シーズンのハリバートンの活躍に期待したい。