ザイオン・ウィリアムソン

チームに必要なのはデュラントではなく、マッカラムのような存在

ザイオン・ウイリアムソンがNBAで最後にプレーしたのは2021年5月4日のウォリアーズ戦。リバウンド争いの際に左手の薬指を骨折し、ラスト5試合を残してNBA2年目のシーズンは終了となった。3年目の昨シーズンはチーム始動前の自主トレで右足を骨折し、リハビリが上手くいかずにシーズン全休に。シーズン終盤には試合前のウォーミングアップでダンクをファンに披露していたが、100%のコンディションを取り戻すことを優先し、チームはプレーの許可を出さなかった。

昨シーズン、ウィリー・グリーンが率いたペリカンズはプレーイン・トーナメントを勝ち上がってプレーオフに出場。ファーストラウンドでサンズに敗れたものの、ザイオン抜きでの1年目のチームとしてはポジティブな1年となった。

そんな昨シーズンに続いて、ザイオンとブランドン・イングラムのコンビが復活する新シーズンへの期待は大きい。今オフにペリカンズはザイオンとマックス額での契約延長に合意。2023-24シーズンからは3300万ドル(約45億円)の年俸を支払うことになるが、ルーキー契約最終年の今シーズンはサラリーキャップに余裕がある『勝負の年』だ。

ハーブ・ジョーンズ、トレイ・マーフィー三世、アルバラードといった若手が台頭、シーズン途中にトレードで加入したCJ・マッカラムもリーダーシップを発揮している。良い基盤があるからこそ、開幕までに各ポジションの戦力を整えたい。

昨シーズン終盤のアルバラードの活躍を考えればデボンテ・グラハムを、同様にシーズン終盤のセンター起用がハマったラリー・ナンスJr.の万能ぶりを生かすならヨナス・バランチュナスはトレードに出す選択肢もある。ザイオンとイングラムのコンビを軸とした戦い方を考えればオフェンスに苦労することはなさそうだが、ディフェンスは大きな課題となる。ホセ・アルバラードはプレッシャーディフェンスと抜け目のないスティールで、ナンスJr.はフットワークを生かしたピック&ロールディフェンスで、チームの弱点を補うことができる。

ネッツにトレードを要求しているケビン・デュラントの去就が注目されるが、ペリカンズは静観の構えだ。デュラント獲得のインパクトは大きいが、イングラムに加えて若手の数人とドラフト指名権を差し出すことになり、今の基盤が崩れてしまう。デュラントよりも昨シーズンに犠牲を払って得た今のチームで勝負してみたい、という欲求の方が強いのだろう。

獲得したいのはチームをブラッシュアップできる、デュラントほどではなくても実力と経験を備えた選手。昨シーズンのトレードデッドラインで獲得したマッカラムは、リラード不在のトレイルブレイザーズで目立たなくなっていたが、新しい環境で心機一転、ペリカンズ加入後の26試合でいずれもキャリアハイとなる24.3得点、6.7リバウンド、4.8アシストを記録した。

今のペリカンズに必要なのはデュラントではなく、マッカラムのような存在だ。ザイオンとイングラムを支え、コート内外での重圧を軽減し、若い選手たちに良い影響力を与えられる選手がもう一人加わることで、ペリカンズは大きく飛躍できる。ザイオンのコンディションと試合感覚がどこまで戻るか、彼がエースとしての自覚をどれだけ持てるかが最重要ポイントだが、ここから先のペリカンズの動きは西カンファレンスの勢力図そのものに影響してきそうだ。