ニック・カレイテス

アデトクンボも同意「ベテラン勢が引退する前に成し遂げたい」

ギリシャ代表は、昨年にカナダで開催された東京オリンピック世界最終予選で、予選突破の本命と見られながらファイナルでチェコに敗れ、出場権を逃した。当時32歳のベテランポイントガード、ニック・カレイテスにとっては、キャリア最大の目標である夢が消えた瞬間だった。

「オリンピックの開会式でギリシャ国旗を持って行進するのが夢だった。ずっとテレビで見て夢見ていたことだから、それを実現させて現役生活に区切りを付けようと考えていた」と彼は明かす。

しかし、彼はバルセロナの一員としてヨーロッパトップレベルでのプレーを続けており、今年のユーロバスケットに参戦するギリシャ代表にも加わった。カレイテスはフロリダで生まれ育ったが、祖父はエーゲ海に浮かぶリムノス島の出身で、自身のルーツに思い入れが強い。

「ギリシャのユニフォームを身にまとうのは光栄だし、そのたびに僕は祖父を感じる」と彼は言う。「来年のワールドカップまではプレーするつもりだ。その後も代表チームに何らかの形で残り、若い世代の選手を育てていきたい」

ギリシャにはヤニス・アデトクンボを中心に充実した選手層がある。カレイテスはその自信を持ちつつもなお、昨年の世界最終予選を始めとする敗戦を忘れてはおらず、タレント力ではなくチーム力で勝とうとしている。

「ヤニスがいればすべては簡単になる。だけど、ヤニスに何ができるか、あるいは他の誰かに何ができるか、じゃない。僕らは全員で自分たちの役割を果たす。みんなで力を合わせ、チームとしてコート上で何をするかが大事なんだ」

去年のオリンピック予選はアデトクンボが欠場していたが、2019年ワールドカップではアデトクンボを擁しながらベスト8進出を逃した。2016年リオ五輪に向けた世界最終予選でも当時21歳のアデトクンボを擁し、カレイテスは全盛期で大会アシスト王(5.3アシスト)となったが、出場権獲得はならなかった。

まさに全盛期を迎えようとしているアデトクンボを擁する時点で、今のギリシャはユーロバスケットの優勝候補だが、スロベニアにはルカ・ドンチッチが、セルビアにはニコラ・ヨキッチがいる。圧倒的なエースを中心に据えながらもチームバスケットを重視する意味では、東京オリンピックで躍進したスロベニアに分があるのかもしれない。

だからこそ、ギリシャもチームの結束力を高めなければならない。長くギリシャ代表を支えてきたカレイテスの心情をアデトクンボも理解している。ヤニスは「メダルのことは考えない。毎回それで負けてしまうからね。NBAのタイトルも狙っていたわけじゃなく、チームとして一歩ずつ成長していった結果だった。今回もそうやるつもりだ。カレイテスやスルーカス、パパニコラウといったベテラン勢が引退する前に成し遂げなければいけない」