ジェレミー・リン

「たった一度でいいから、純粋にバスケの実力で僕を語ってほしかった」

ジェレミー・リンは33歳になり、10年前のNBAで自らが巻き起こしたムーブメント、『リンサニティ』を苦い思い出として振り返っている。「僕は『リンサニティ現象』の中で人間性を失ったようだった」と、『Sky』に語った。

中国系アメリカ人として初めてNBAで活躍し、ニックスでの2011-12シーズンには14.6得点、6.2アシストを記録してブレイクを果たし、大型契約を勝ち取ったロケッツでもNBAの有力ガードとしてコービー・ブライアントを始め名立たる選手たちと対等に渡り合っており、嫌な記憶ではないはずだ。

それでも彼は「リンサニティが生み出す副作用の大半が嫌なものだった。そこから逃げようとした。あっという間に僕のプライバシーは失わけた。僕だけじゃなく家族までがパパラッチに追いかけられた」と振り返る。

NBAでの目覚ましい活躍は数年間しか続かず、その後はケガと折り合いを付けながら我慢のプレーが続く。リン自身、ネガティブなものも含めコート上での出来事は問題とは感じていなかった。ただ、周囲からの大きすぎる期待は重荷だった。

「世界中から期待されて、スーパーヒーローみたいな存在になりかけていた。その中で人間らしくいられなくなった。やがて、より深いレベルの人種問題があると分かった。僕はずっと『アジア系バスケ選手』であることから逃げたかった。僕はただ『偉大なバスケ選手』になりたかっただけなのにね」

「たった一度でいいから『アジア系』という見方を抜きにして、純粋にバスケットボールの実力で僕を語ってほしかった」