アジアカップで自信を増した長距離砲「絶対にどこかで入ると思っていた」
バスケットボール男子日本代表は8月13日、イラン代表と強化試合を行い82-77で競り勝った。この試合、日本代表は須田侑太郎が3ポイントシュートを6本成功させての20得点、馬場雄大が19得点とチームをけん引したが、彼らと同様に勝利に大きく貢献したのが井上宗一郎だった。
チーム最多となる33分43秒のプレータイムで7得点5リバウンド2アシストを記録。3点リードで迎えた残り1分19秒には、富樫勇樹のアシストから勝利に大きく引き寄せる3ポイントシュートを決める勝負強さを見せた。
井上といえば、筑波大時代から3ポイントシュートを積極的に打ち、日本人ビッグマンでは数少ない生粋の『ストレッチ4』だ。コート上の5人全員に3ポイントシュートを求める指揮官トム・ホーバスが目指すスタイルとは相性抜群で、今夏はディベロップメントキャンプからずっと代表活動に参加している。
試合を重ねるごとに結果を出していくと、先月のアジアカップでも高確率で外角シュートを沈め、前回のイラン戦では3ポイントシュートを4本すべて成功させて12得点をマークしていた。ただ、これは勝敗の行方がほぼ決した中で決めたもの。確率こそ6本中2本成功と低かったが、今回決めた2本の価値はそれ以上に大きかった。
井上は3ポイントシュートについて、国際舞台で結果を残せたことによるメンタルの変化を明かす。「アジアカップの経験があったからこそ自信を持ってシュートを打てています。今日も前半は入っていなかったですが、絶対にどこかで入ると思っていたので最後にああいう結果に繋がったと、後になると感じます」
また、スイッチによって相手のエースガードたちに何度もスピードのミスマッチによる1対1の状況を作り出されたが、粘り強くくらいつくなど、アジアカップの時は一味違う堂々としたプレーぶりを見せた。
ホーバスヘッドコーチ「今、彼についてまったく心配していないです」
この井上の活躍について、ホーバスは「アジアカップの経験が大きかった。彼は本当にレベルアップした」と評すると、特にディフェンス面の進化を称えている。「今日のスイッチディフェンスでは、相手の一番上手な選手に何回も素晴らしいディフェンスを見せて本当に良くなったと思う。今、彼についてまったく心配していないです。逆に自信を持って彼を使っています」
ただ、井上本人は、自身のプレーについて「点数をつけるなら50点くらいです」と指揮官とは真逆の評価だ。日本代表の試合で主力として30分以上プレーしたが、「達成感はないです。自分が途中、足を引っ張ってチームを悪いムードにしてしまったので満足は全然していないです」と語った。
スイッチディフェンスについても「前半は意外とできていた方だったと思いますが、後半はそこを狙われてファウルがかさんでしまい、相手にアドバンテージを与えてしまったのが課題です」と、反省ばかりだ。ただ、彼が対峙したのは、アジアを代表する名ガードのモハマッド・ジャムシディで、どんな選手でも止めるのは簡単ではない。そんなトップ選手を相手にしてもやられたことには悔しさしかなく、明日の試合でのリベンジに闘志を燃やしている。「今日に関しては完璧に狙われてやられてしまったと反省しています。ただ、これで終わるわけではなく明日の試合、Window4でもチャンスがあると思います。まず、明日はより気を引き締めて絶対にやられない気持ちでやりたいです」
ホーバスヘッドコーチがビッグマンに求める、『ストレッチ4』としての存在感をどんどん増している井上だが、本人にそういった意識は皆無だ。「代表はずっとトライアウトだと思っています。絶対にプレータイムをもらえるとは今日の試合前にも思っていなかったです。与えられたチャンスで毎回全力でやることが大切です」
この飽くなき向上心で井上がどこまで成長していくか楽しみだ。まずは明日の試合での相手ガードとの1対1でのディフェンスに注目したい。