『チームを勝たせる戦力』であるかどうかを証明する戦い
今オフの去就が注目される一人、コリン・セクストンの今後はまだ決まっていない。2018年のドラフトで1巡目8位指名でキャバリアーズに加入した彼は、ルーキーイヤーから主力として活躍、3年目の2020-21シーズンには平均24.3得点、4.4アシスト、3.1リバウンドとエースの働きを見せた。しかし昨シーズンは半月板損傷の大ケガで11試合にしか出場していない。
その昨シーズン、キャブズはプレーイン・トーナメントで敗れたものの、44勝38敗と『レブロン時代』以来となる躍進を果たした。そんなチームを牽引したのがダリアス・ガーランドだ。ガーランドはセクストンに遅れること1年、2019年の1巡目5位でキャブズに加入。2人はキャブズの将来を担うバックコートコンビとして活躍してきたが、皮肉にもセクストンの戦線離脱がガーランドのブレイクの引き金となった。
これまではコンビで役割をシェアしながらも、プレーメークはガーランド、点を取るのはセクストンという大まかな役割分担があった。しかしセクストンを欠いて全権を担ったガーランドは、プレーメークだけでなく得点も取りに行き、21.7得点、8.6アシストを記録。キャブズ躍進の立役者となった。将来有望な選手の多いキャブズにおいても、ガーランドが今後チームの中心になるのは間違いない。
これでセクストンの立場は微妙なものになった。キャブズは今オフにガーランドとマックス額での契約延長を結んだ。今後はサラリーキャップが年々厳しくなり、セクストンに大盤振る舞いはできない。
この状況でキャブズは3年4000万ドル(約54億円)のオファーを提示したと言われているが、セクストンはこれを受けないようだ。ガーランドのブレイクで相対的にセクストンの評価は下がったが、ケガから復帰してこれまでのようなパフォーマンスを見せられれば、彼自身の本質的な評価は取り戻せる。契約延長に応じないまま年俸850万ドルのルーキー契約最終年を過ごし、自分自身の再評価を勝ち取った上で完全フリーエージェントになる来年オフを待つ。
セクストンはこれから、膝の状態にもう問題がないことをプレーで証明しなければならない。ただ、落とした評価を元に戻すだけでなく、上げることが求められる。
ガーランドと一緒にプレーしていた時の彼はボールを持ちすぎることが指摘されていた。ハンドラーとして力があるのは悪いことではないが、チームメートと連携してボールとチャンスをシェアするスタイルを身に着ける必要がある。キャリアを通じての3ポイントシュート成功率は37.8%と高いが、試投数を従来の3.9から伸ばしても、この確率をキープする、あるいは上げる必要もある。
また、弱点であるディフェンスの改善も必要だ。身長186cmとサイズがないため高さにやられてしまう場面はあるだろうが、鋭いドライブでリムに向かって強引に決めるオフェンス時の屈強さはディフェンスになると影を潜めてしまう。ディフェンスの名手となる必要はないにせよ、目立った穴となるようではチームにとって使いづらいガードとなってしまう。
これは、『勝てないチームでスタッツを残す』のではなく、『チームを勝たせる戦力』であるかどうかを証明する戦いだ。新シーズンにこれらの課題をクリアできれば、セクストンは良い契約を勝ち取ることができる。先発でガーランドとコンビを組むのはキャリス・ルバートになりそうで、再起のシーズンはシックスマンとしてプレーすることになりそうだが、彼が相棒ガーランドに追いつくほどの成長曲線を再び描くようになれば、キャブズにとっても大きなプラスとなる。