「まだ6割ぐらい」の状態も上々のパフォーマンス
先週末に行われたWリーグ開幕節、JX-ENEOSサンフラワーズは山梨クィーンビーズを相手に2試合とも快勝を収めた。ポイントガードのポジションでは吉田亜沙美がベンチに回り、藤岡麻菜美が先発。昨シーズン開幕直後に骨盤の剥離骨折と腱断裂を負い、リーグ戦の出場はわずか2試合。ワールドカップでようやく復帰し、JX-ENEOSに戻ってきた。2試合ともに大量リードを奪う展開で、ともにプレータイムは14分半と短かったが、第1戦は5得点10アシスト、第2戦は6得点5アシストと上々のスタートを切っている。
もっとも、藤岡にとってはスタッツよりも元気にプレーできるのが一番。「身体のキレ、コンディションで言うと自分の中ではまだ6割ぐらい。でもタクさん(渡嘉敷来夢)とかジュナ(梅沢カディシャ樹奈)とタイミングが合ってきたので、それは良かったと思います」
腰のケガは「まだちょっと痛い時がある」と完治はしていない。「身体の使い方を覚えて、ちゃんとコンディションを整えて、いろんな方に協力してもらってケガと付き合っていきます。代表で教えてもらった、練習に入る前のエクササイズをやるようにしています」
今シーズン、藤岡はJX-ENEOSの先発ポイントガードを任される。これは『師匠』である吉田が、藤岡を推す形でのスタメン交代だったそうだ。「リュウさん(吉田)がいろいろ考えてくれて、これから日本代表で自分がスタートで出るとなった時に、チームでベンチから出ていくのとスタートでやるのとでは責任も心構えも違うから、そこスタートで経験を積んで学んでほしいと。リュウさんは今年はバックアップに回ってチームを支えていくという考えを、代表から戻ってチームの練習に入る前に話してもらいました」
コンディションは万全でなくともワールドカップで『世界』のレベルをその目で確認できたことは大きな収穫だ。「世界のガードを見た時に、やっぱり3ポイントもあるしゲームメークもできる、あとはチームをまとめる存在感もやっぱりすごいなって。何かあるたびに選手を集めて、ガードがしゃべっている時はみんなその人の目を見てちゃんと聞いている。信頼がすごく伝わってきて、それを自分はチームでまずやって、代表にもっていけたらと思います」
「JX-ENEOSのバスケをやりきれば結果はついてくる」
かくして藤岡は、日本一のポイントカードである吉田のいるJX-ENEOSで、先発ポイントカードを任されることになった。JX-ENEOSは層が厚いだけに、若手はプレータイムを確保するのも容易ではないが、藤岡は猛スピードでステップアップし続けている。「リュウさんがいろいろな面で託してくれているのは伝わります。いつかは自分がリュウさんのポジションにならなきゃいけないし、『超えてほしい』とも言ってもらっています。だからこそ、自分がもうその世代、立場なんだと感じなきゃいけない。何年目とかは関係ないです」と藤岡は言う。
加入当初から、偉大な『師匠』である吉田の一番近くで学び、「東京オリンピックでは自分がメインのポイントガードになる」という強い意志を公言していた藤岡は、実現不可能とも思える夢へ向かって突き進んでいる。この1年でJX-ENEOSの先発ポイントガードを務め上げることができれば、日本代表のメインのポイントガードの座は自然と藤岡のものになるはずだ。
「今回の代表で、やっぱりJX-ENEOSが代表を引っ張らなきゃいけないと感じました。今までは代表にJX-ENEOSから5人ぐらい選ばれて、自然と引っ張ることができていましたが、今回は自分とアース(宮澤夕貴)しかいなかったので。JX-ENEOSは優勝するために何が必要かを知っていて、それを徹底できるから強いんだと思います。それを代表に浸透させられなかったのが今年でした。それを浸透させるためにも、しっかりここでレベルアップして日本のレベルを上げたいです」
前人未到のリーグ11連覇へ向かってJX-ENEOSはスタートを切る。藤岡も「目標は2冠、絶対に2冠は取ります」と言いつつも、必要以上の気負いはない。「JX-ENEOSのバスケをしっかりやりきれば結果は自ずとついてきます。それを信じて頑張ります」
「ない」と言うとは思っていたが、一応「JX-ENEOSの先発ポイントガードを託されることにプレッシャーは感じないか?」と質問すると、迷いなく「今は楽しいばっかりです」という答えが満面の笑みとともに帰ってきた。ようやくプレーする喜びを取り戻し、次の目標が明確になった今、藤岡はただひたすらに突き進む。
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