東京オリンピックを見据えて再出発する渡嘉敷来夢「どう自分が進化するか」の1年

2018/10/24
Bリーグ&国内
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渡嘉敷来夢

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、©WJBL

疲労骨折での手術「同じ思いはしたくなかった」

今夏のワールドカップに参戦したバスケットボール女子日本代表に、渡嘉敷来夢の姿はなかった。日本の女子バスケ界で最高のタレントである渡嘉敷の不在が影響しないはずはない。チームはよく戦ったが、同じアジアのライバル中国に敗れ、ベスト8進出を逃す結果に終わっている。

その渡嘉敷は足首の痛みが出たために代表参加を見送っていた。「古傷です。オーバーワークが一番の原因だと思います。そういった中でハードな練習をすると足首に来てしまうので、今後のバスケット人生に向けた足のメンテナンスが必要だという判断でした」

もちろん、日本代表への思い入れは強く、ワールドカップの年に代表参加を見送るのは簡単な決断ではなかった。「いやあ、それは本当に……」と少し考え込み、こう続ける。「一番大切なのは元気な姿でバスケットをすることだと自分に言い聞かせました。ワールドカップに出ないのか、と思った方も多いかもしれないですけど、ワールドカップの分までこのシーズン、JX-ENEOSでプレーしている姿を見せたいと思います」

高校時代からスーパースターの渡嘉敷だが、その当時からケガと向き合いながらのプレーを強いられてきた。しかも、常にWリーグと代表活動の掛け持ちで、リーグのオフシーズンにはWNBAにも挑戦し、休みなくプレーし続けてきた。「去年もその前も、ずっとシーズンを通してプレーしてきました。去年もアメリカでのシーズンが終わって、帰って来た3日後から練習を始めて、それで開幕からプレーしていたので、正直なところキツいなって。ワールドカップも大事ですけど、オリンピックのことを考えたら、来年に万全の状態じゃなく代表にいないよりは、今年我慢して身体を一回リセットさせなければいけないと感じた部分もありました」

エースとなれば、代表はただ参加すれば良いものではない。チームを引っ張り、勝利に導くための責任と覚悟が求められる。「痛くても出るからにはベストパフォーマンスをしなきゃいけない。それは疲労骨折で手術する前に経験したことなので、同じ思いはしたくなかったんです」と渡嘉敷は難しい決断を語った。

渡嘉敷来夢

「もう前を向くしかない」とJX-ENEOSに全力

ワールドカップに参加せず、WNBAへの参戦へも取りやめ、この夏は身体を労わった。「足首の調子も今はすごく良いです。そういった中でバスケットをやれるのは本当に楽しいです」と渡嘉敷は言う。

だから、ワールドカップのことはもう考えない。「もう前を向くしかないです。どんな状況であれ、悔やんでいてもシーズンは始まるし、その間に自分に何ができるかと考えた時に、新しいプレーを身に着けたり、身体を強くすることに切り替えました。ワールドカップに出場できるに越したことはなかったんですけど、自分が進化するための新しい課題が見つかったので、うまく気持ちを切り替えることができました」

トム・ホーバスが率いる今年の日本代表は、全員が3ポイントシュートを打つことを一つのテーマにしていた。代表を離れていた渡嘉敷も、夏の間に3ポイントシュートの習得に励んだ。先週末に行われた山梨クィーンビーズとの開幕戦、渡嘉敷のシーズン最初の得点は3ポイントシュートによるもの。「今まで練習してきた3ポイントシュートがしっかり出せたことは自分にとってプラスになったと言うか、今シーズンもっともっとレベルを上げていかなきゃいけないところなんですけど、一番最初に決められて良かったです」

藤岡麻菜美と梅沢カディシャ樹奈が先発に抜擢された新生JX-ENEOSにおいて、渡嘉敷にはこれまで以上にチームを引っ張っていく姿勢が求められる。「メイさん(大﨑佑圭)がいれば『11連覇しなきゃ!!』と思っていたかもしれないですけど、今回は流さん(吉田亜沙美)もスタートではないので、あまりそう考えないほうがノビノビできると思います。上位と当たった時、皇后杯になった時にしっかりと力を出せるよう、1試合1試合戦っていきます」

「チームの優勝はもちろんですけど、やっぱり一番は東京オリンピックに向けてどう自分が進化するか。最後は自己満足かもしれないですけど、人のためよりも自分の満足いくプレーをしたいと思っています」

Wリーグは開幕節にしてデンソーアイリス、富士通レッドウェーブが連戦の一つを落とす波乱の幕開けとなった。それでもJX-ENEOSは山梨を寄せ付けず大差で2連勝を収めている。エース渡嘉敷が心身ともに充実する今、『女王』はまた新たな強さを見せてくれそうだ。