球際の強さで上回ったハードな守備と効果的な3ポイントシュートで日体大に快勝
全日本大学新人戦の男子決勝は、大東文化大が堅守と3ポイントシュートで優位に立って、日本体育大に70-54で快勝した。約1カ月前に行われた関東大学リーグ新人戦で優勝した日体大と3位の大東大による組み合わせとなる中、試合の立ち上がりで日体大は持ち味であるガード陣のスピードを生かしたトランジションで数的優位を作り出しオープンで3ポイントシュートを放つが決めきれない。逆に大東大は塚本智裕が第1クォーターだけで3本成功と高確率で3ポイントシュートを決めて優位に立ち、第1クォーターで大東大が23-10とビッグクォーターを作った。
第2クォーター早々、日体大は3ポイントシュートに速攻も飛び出しての連続得点で、点差をすぐに1桁に縮める。ここで大東大は山内ジャヘル琉人が3ポイントシュートを導くナイスアシストに加え、自らも内と外で得点を挙げてチームを牽引。一進一退の攻防となり大東大の8点リードで折り返す。
後半になって互いに譲らない展開となるが、大東大はアブドゥレイ・トラオレがベンチに下がりサイズ面で不利になる中でも、田中流嘉洲の粘り強いディフェンスもあり、日体大のムトンボ・ジャンピエールのインサイドアタックに対応していく。これでリードをキープしたまま第3クォーターを終える。
第4クォーターに入っても大東大はルーズボールなど球際の強さで上回って、最後までディフェンスが崩れず。終盤には山内、品田真吾がタフな状況から3ポイントシュートを決めて頂点に立った。ともにペイント内での得点に苦戦する中、大東大は25得点の塚本、16得点の品田を軸に3ポイントシュート31本中14本成功に対し、日体大は24本中4本成功と長距離砲の精度が明暗を分けた。
「留学生相手にもフィッシュまで持っていけるように練習から磨いていきたい」
シュートは水物であるが、3ポイントシュートの成功率で大きな差が出た要因として、大東大の方がインサイドアウトからのキックアウトなど、より良い状況でシュートを打てていた。その立役者となったのが、ドライブから相手ディフェンスを引きつけて合わせやキックアウトとナイスパスを繰り出し、攻撃の起点となっていた山内だ。
決勝では14得点8リバウンド4アシストを挙げ最優秀選手賞に輝いた山内は「故障などもあってチーム状況もそんなに良くない中、試合を重ねるにつれて成長して勝ち取れた優勝だと思います。関東新人では準決勝の日大戦で、自分たちの持ち味であるディフェンスが崩れて負けてしまったところがありました。今回はディフェンスからチームが一つになれたと思います」と守備で勝ち取った勝利と語る。そして、自身のプレーについてはこう振り返る。「西尾(吉弘監督)さんには自分のプレーを思いっきりやろうと言われていて、その中で判断力が少しは成長できた部分かなと思います」
山内の持ち味は何といっても豪快なダンクを叩き込める瞬発力を生かしたドライブで「学生コーチの人にも自分の強みはドライブからのフィッシュとよく言われていて自信を持っています。ドライブからどんどん展開してくのが自分のやり方です」と本人も意識している。
決勝でもその強みを存分に発揮していた山内だが、さらなるレベルアップへ向けて貪欲だ。オープンになって味方を見逃さずパスをさばく判断力を高めることも大事だが、まずは自分でしっかりと決め切れる力をつけたいと強調する。「留学生相手にもフィニッシュまで持っていけるようにもっと練習から磨いて、仲間とともに成長していきたいです。まずは自分がアタックする気持ちです」
今年の年明け早々、山内は東海大のハーパー・ジャン・ローレンスジュニアとともに短い期間であるが地元チームである琉球ゴールデンキングスのワークアウトに参加した。「将来的にはプロを目指していますが、まずは大学で大会ごとに成長して、タイトルを勝ち取る、という段階を踏んでやっていきたいです」
このように自分の目指す道筋を明かす山内だが、永久欠番の金城茂之、チームの顔である岸本隆一と大東大から加入した2人の沖縄出身選手に続き、将来的な琉球入りを期待するファンの声は少なくない。デリケートな話題で安易に口にすることは難しいが、「個人的には沖縄県出身なので、沖縄アリーナでプレーすることに少しは思うところもあります」と思いを語る。
大学シーズンは、あと数カ月で秋のリーグ戦がいよいよ始まる。特別指定としてBリーグでも実績を残す4年生エースの高島紳司を軸に昨年の8位からの逆襲を期す大東大だが、そのためには山内など下級生のステップアップも欠かせない。山内がドライブに磨きをかけボールハンドラーとして進化を遂げるかは、大東大の躍進にも大きな影響を与えるはずだ。