金丸晃輔

大野新ヘッドコーチと共闘した過去

鳴り物入りで加入した島根スサノオマジックをわずか1年で退団し、去就が注目されていた金丸晃輔の新天地が三遠ネオフェニックスに決まった。金丸の三遠入りが濃厚であることは会見に先んじて地元紙等が報じていたが、7月1日、豊橋市内で開かれた同チームの新体制発表会見で正式なものとなった。

6月頭に牛尾信介氏が球団の新たな代表取締役に就任するなど動きのあった三遠だが、この体制発表会見では大野篤史氏を含めて千葉ジェッツから移籍してきた大量のスタッフ、また金丸を含めて今シーズンを戦う外国籍選手を除いた全選手がこの会見で明らかになった。

三遠は、Bリーグ初年度こそ中地区2位という好成績を収めたが、それ以降は下位に沈み、昨シーズンも10勝48敗と大きく負け越し、西地区最下位に終わった。そんなもがき苦しむチームにとって、金丸は久々に得た大物日本人選手だ。1時間ほどの会見で質疑応答の時間は限られ、彼がなぜ島根を1年で退団したかまで話が及ぶことはなかったものの、新天地を選んだのは新体制となった同チームが「生まれ変わり、僕もチャレンジができること」が決め手になったと話した。

また、大野氏の新指揮官就任も移籍の理由と無縁ではなかったはずだ。金丸は2011年にJBL時代のパナソニック・トライアンズでキャリアをスタートさせたが、翌シーズンの1年のみながら、同チームでアシスタントコーチを務めていた大野氏と共闘している。

長年プレーしたシーホース三河を離れ、島根へ電撃移籍した金丸だが、思うほどの活躍を見せられなかった。チームは西地区2位となり、チャンピオンシップでもセミファイナルまで進出したが、2020-21シーズンのBリーグMVPは、キャリア11年の中でワーストとなる平均11.1得点に終わっている。リーグ優勝1度、天皇杯3連覇など、千葉を常勝チームに作り上げた大野ヘッドコーチは三遠で見せる「バスケットのスタイルはこれから考えなきゃいけない」と語るに留めたが、3ポイントシュートを武器とし東京オリンピックにも出場した稀代のスコアラーの金丸をどのように生かしていくかが、低迷してきたチームの浮上の鍵を握るだろう。

三河ではオフェンスのファーストオプションとなることも多かった金丸だが、島根ではなかなかボールが回ってこないという苦悩を味わった。金丸は「特に個人的に数字にこだわってはいない」と言う一方で「3ポイントシュートが持ち味なので、どんどん打ってチームに貢献していきたい」とも口にするあたり、昨シーズンに味わった欲求不満ぶりを感じさせる。33歳のベテランは、新天地で『捲土重来』を狙っているのだろう。

「(チームが)新体制になるということでプレッシャーなどもあると思うんですけど、プレッシャーに負けず、むしろそれを楽しみに変えながら、何も気負うことなくやっていきたい」

金丸の話のトーンはいつも静かで、言葉の真意を図りにくいところがあるがそれは悪いことではない。マイペースなところはコート上での安定したプレーにも繋がる。来シーズン、三遠のユニフォームを身に着けた金丸が気負うことなく、淡々とシュートを打つ姿が増えれば、それはチームにとってポジティブなサインと言えよう。