指揮官も「成長している」と高評価
今シーズン、比江島慎、橋本竜馬が退団したシーホース三河は新たなチームに生まれ変わった。その影響もあり、ここまで開幕5連敗と苦しいスタートを強いられている。しかし、暗い話題ばかりではない。新たな選手の台頭もあり、その筆頭格が加藤寿一だ。
過去3シーズン、加藤の出番は主に勝敗が決した後の数分間という状況だった。しかし今シーズンは、第2節のアルバルク東京戦で先発に昇格すると、17日の川崎ブレイブサンダース戦では、約25分の出場で3ポイントシュート3本中2本成功を含む8得点2リバウンド2スティール1ブロックと攻守に渡って光るプレーを見せた。
三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは、試合を重ねるごとに存在感を高める加藤を次のように評している。「練習から加藤君はいい動きをしています。まずディフェンスが良い。今日も辻(直人)選手に一生懸命ついてくれた。ガード陣が2人抜けてパスの回りが悪くなり、ディフェンスをよりやらないといけない状況になっています。その中で、彼は非常にディフェンスを頑張ってくれます。良いディフェンスがオフェンスにつながっていて、成長している。よく頑張っていると思います」
そして、加藤自身は、川崎戦について「ちゃんと決めないといけないところでシュートを決められました。また、相手の得点源である辻さんにまず良い形でシュートを打たせなかったことは良かったです」と語るが、何よりも勝利という結果を出せなかったことを悔やむ。
「自分の良いパフォーマンスをどうチームの勝利に結びつけていくのか、勉強していかないといけないです。開幕してから1つも勝っていない。そこを自分がどうチームに貢献できるかを考えてプレーする必要があります」
「コート内外でプロバスケ選手としてできることがある」
三河に入って4シーズン目の加藤にとって、今は主力の座をつかみ取る絶好のチャンス。「橋本選手、比江島選手と主力の2人がいなくなることで、僕自身としてはチャンスという思いはありました。これをしっかりモノにしないといけないと、オフシーズンは危機感の方が大きかったです」との思いを開幕前から強く抱いていた。
実戦経験が少なかったとはいえ、「試合に出ていない時でもコート内外でプロバスケ選手としてできることがあると常に考えてきました。今はプレータイムが増えていますが、前々から準備をしてきたという思いはあります。『僕だってできるんだ』という自信はありました」と、日本トップクラスのチームメートと切磋琢磨してきたことへの手応えもあった。加藤にとっては、三河に入団してからの日々の積み重ねを今、コートで証明できているという意識だろう。
ちなみに川崎の本拠地であるとどろきアリーナの最寄駅は武蔵小杉駅だが、これは加藤の母校である法政二高と一緒であり、彼にとってまさに馴染み深い場所。そして、この試合では法政二高のバスケ部員がモッパーを務めていた。だからこそ、加藤にとっても特別な思いでプレーした試合であった。
「意識してなかったと言えば嘘になります。高校は法政二高、大学も法政大学。大学もチーム練習は法政二高の体育館と、7年間通った場所です。モッパーも法政二高の選手で、後輩たちに良いところを見せたい。その中でチームが勝っているところを見せたい。川崎さんのホームで、川崎さんを応援していると思いますが、先輩が頑張っているから、俺も頑張ろうと思う後輩がでたらうれしいです」
自身のプレータイムよりもチームの勝利に注力
母校の後輩の前で、B1のトップチーム相手にも通用することを証明した加藤が今、何よりも欲するのがチームの勝利だ。「試合に出ているうれしさもありますが、それよりもチームが負けている悔しさが大きいです。負けている時こそポシティブな気持ちを持って、落ち込んでプレーするのではなく、自分がどうすべきかもっと考えて積極的にプレーしていきたい」と意気込む。
「これからも試合経験を積んでいって、相手からして嫌な選手になっていきたいです」と自らの目標とする選手像を語る。相手のエースシューターを抑え込むタフなディフェンスに、ここぞの場面でシュートを沈める決定力。このように加藤が自分の描く相手が嫌なだと思う選手像を確立できた時、三河の勝利数も自然と伸びているはずだ。