リーグ戦終盤に躍進、トム・ホーバスも「フィジカルが強く面白いと思います」と期待
アルバルク東京の吉井裕鷹は今シーズン終盤、ライアン・ロシター、アレックス・カークが続けて戦線離脱した緊急事態でプレータイムを得ると、196cmのサイズとフットワークを生かした豪快なプレーで輝きを放った。オフェンスでは力強いダンクなどで会場を沸かせたが、それ以上に目立ったのが3番、4番ポジションの外国籍選手を相手にしたディフェンスだった。特に島根スサノオマジックのペリン・ビュフォード、秋田ノーザンハピネッツのジョーダン・グリンといったBリーグ有数のスコアラーに対する粘り強い守りは強烈な印象を与えた。
この吉井の活躍は、日本代表の指揮官トム・ホーバスの目にも当然のように留まり、Window3の予備登録メンバーに選出され強化合宿に招集されている。これまでのワールドカップ予選4試合を経て、ホーバスは日本の目指すテンポの速いバスケットボールを実行するための鍵として、前からどんどん仕掛けるアグレッシブなディフェンス、そこからのターンオーバー奪取を挙げた。そして、その中で「吉井(裕鷹)選手はフィジカルが強く、面白いと思います」と言及するほど、吉井に期待を寄せている。
ただ、周囲のディフェンスへの高い評価について吉井は「自分の持っているものを出しているだけです。これが自分のスタンダードとしてあるので強みにはしていますが、頼りすぎずにいろいろなことに対応し続けたらと思います」と、極めて冷静だ。
その冷静さはA代表デビューに大きく近づいていることについても同じだ。「思いが入りすぎると空回りしたりするので、今まで教わってきたバスケを信じて自分が持っているものを出すこと以外は考えないようにしています。パリ五輪に対しても、どんな人がかかわろうと、自分で居続けることが大事だと思います」
「自分としてはトムさんのバスケがかなり新しく感じて、良い時間を過ごせています」
冷静沈着な吉井は、A東京とは全く違う代表のスタイルについても着実にアジャストしてきている。「アルバルクでのルカ(パヴィチェヴィッチ)のバスケはシステマチックでした。どこのポジションに移動して、どういうシュートを打つ。ディフェンスではどう守るとか、すべて決められた上で動きます。トムさんのバスケは、最初の動きは決めつつ、他のいろいろなオプションがあり、それを使うかは個人の感性の問題となります。ただ、どちらにせよ各選手に役割はあり、やはり空いたらシュートを打たないといけないです」
名将ルカに基礎を叩き込まれ、しっかりとした土台が大前提としてある上で、今の吉井は「自分としてはトムさんのバスケがかなり新しく感じて、良い時間を過ごせているなという感じです」と、新しいスタイルに触れることで、選手としての引き出しを増やしている。
現役のNBA選手はおらず、次のWindow3で対戦するオーストラリア、チャイニーズ・タイペイにビュフォードやグリンを大きく凌駕するようなスコアラーがいるとは想像しにくい。だからこそ、吉井にはエースストッパーとしての活躍を期待したい。Bリーグのパフォーマンスを見れば、それを成し遂げられる力を彼は十分に持っているはずなのだから。