文=鈴木健一郎

Bリーグに旋風「どことやっても負ける気はしません」

Bリーグ開幕から1カ月半。この新しいリーグで最も急ピッチで成長している選手が中東泰斗かもしれない。

明治大で活躍し、アーリーエントリーで三菱電機名古屋に入団。ルーキーイヤーの2015-16シーズンには『NBL最後の新人王』に輝いた。そして今シーズン、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと名称を変えたチームの中心選手として結果を出し、代表初招集を勝ち取って台湾遠征に参加している。

中東は「せっかく選ばれたので結果を残せるように、自分の良いところをしっかり出せるようにしてアピールしたい」と抱負を語る。

今夏の一連の代表招集には入らなかったが、このタイミングでの初選出。これはBリーグで見せたインパクトがモノを言ったということだろう。大胆な世代交代を図った名古屋は、開幕からアグレッシブなバスケットで西地区を引っかき回しており、そこで中東はオフェンスをリードする存在となっている。

中東の言葉は、良い意味で自信と若さに満ちている。「まだ14試合しかやっていませんが、どことやっても負ける気はしません。負けた試合も全部、自分たちが崩れて負けているので、相手どうこうではないです。勝っている試合は自分たちの勢いで勝っているし、負けた試合は逆の意味で若さが出てしまい負けました」

昨シーズンと今シーズンでは、チームの名前も戦力構成も、そして中東のプレー意識もガラリと変わっている。「以前は五十嵐(圭)さんとか川村(卓也)さんという素晴らしいベテラン選手がいたので、自分はその人たちを生かすプレーをしていました。でも今は『自分が、自分が』でやっています。自分メインでピック&ロールを使って攻めたり、アシストも最近はよく出ていて、自分中心でチームを生かせていると思います」

チームの中心になった今、成績に対する責任感もある。第4節までは7勝1敗と突っ走った名古屋だが、第5節と第6節は1勝1敗と星を分け、先週末の第7節では初の連敗を喫した。「最初は良かったんですけど、最近は疲れもあってか調子が落ちてきました。その原因は自分の不調もあります。自分がもっと点に絡んでいかなければいけないと、すごく思っています」

代表合宿に参加した中東は「自分の強みを積極的に出していく」との言葉通りの姿勢で練習に取り組んだ。

攻めを貫く強気の姿勢は「元々なんです」

日本代表を率いる長谷川健志ヘッドコーチは、中東について「今の日本の選手でドライブをして1on1でフィニッシュまで持っていける選手が少ない。比江島慎の次に来る選手になってほしい」と期待を語る。中東自身も、「自分も長谷川さんにそう言われました。自分の強みを積極的に出していくつもりです」と言う。

もっとも、日本代表は彼にとって初体験のチーム。代表のバスケットに順応しなければならない難しさもあるだろう。中東は言う。「名古屋だと何も考えずに攻められるんですけど、代表で『自分が、自分が』をやっても合わないと思います。そこは昨シーズンのような『合わせるプレー』をやりますが、せっかくの代表なので、自分がドライブから崩して、『日本に足りない何か』を自分がもたらせたらいいなと思います」

長谷川ヘッドコーチが指摘するように、日本には自分で切り崩していくタイプの選手が少ない。スキルや体力面だけでなく、協調性を重んじる日本人のメンタルが、スポーツで必要になる積極性を阻害するシーンはしばしば見られる。中東に期待されるのはまさにその部分、自信と責任感に裏打ちされた『自分が、自分が』という攻めの姿勢だ。

そんな話を当の中東に振ってみたが、「どうなんですかねえ」と素っ気ない。「元々なんです。特に意識してやっているわけではないので。バスケを始めた時からこんな感じです(笑)」

頼もしい24歳は、さらなる成長の糧になる『収穫』を台湾から持ち帰ってくれるに違いない。