エース不在のチームでオフェンスを牽引
10月17日に行われたアルバルク東京vs栃木ブレックスの新旧王者対決は、延長の末に79-74で栃木が勝利した。
A東京は田中大貴と小島元基を欠く苦しい台所事情となったが、栃木を相手に最後まで食らい付いた。敵将も「ケガ人が何人かいる中でも、チャンピオンチームだと思わせるくらいの激しさや遂行力があった」と称賛している。
特に、田中の穴を埋めることで目立ったのが馬場雄大だった。馬場は34分間のプレーで9得点10アシスト3スティールを記録。プレータイムとアシストはともにキャリアハイの数字で、マルチな活躍を見せた。
前半が2得点7アシスト、後半で7得点2アシストと、前後半でプレースタイルに違いが見られたが、馬場はプラン通りだったという。「40分間戦うスタミナの配分を考えた時に全部ガツガツ自分で行くんじゃなく、(最初は)周りの選手を生かすという考えがありました。それを実行しようとして、アシストが増えたと思います」
ボールハンドラーとなり、ピック&ロールからズレを作ってアシストを量産する姿は田中を思いださせた。田中と同じプレーをしろとの指示はなかったが、手本にした部分はあった。「大貴さんも第4クォーターの最後にゲームに勝たせることをやっています。4クォータの最後で、いかにチームを勝たせられるかだと思っていたので、体力を最後に取っておきました」
終盤を見据えて体力とプレーの内容をコントロールした馬場は、最終クォーターだけで5つのファウルを誘発し、試合を優位に進める原動力となった。
フリースローを獲得し、「そこで安心した自分もいた」
エース級の働きを見せた馬場だが、チームを勝利に導くことはできなかった。馬場自身が「自分のせいで負けたとしか思えません」と振り返るように、69-69の同点で迎えたラスト1.7秒の場面、遠藤からファウルを誘い2本のフリースローを獲得しながら、これを2本とも失敗している。
「その前にターンオーバーをした時に、次は絶対『俺で行く』って、絶対ミスを取り返すと思っていました」と直前に犯したターンオーバーの汚名返上への意識があったことを明かした。「プルアップで仕掛けようと思ったんですけど、冷静に遠藤さんが見えていて、最後のファウルをもらったプレーになりました。的確な判断だと思って、冷静ではいたんですけど、そこで安心した自分もいたというか。そんなに甘くなく、自分の実力不足でした」と最後のプレーを振り返り、馬場は下を向いた。
「今まで大貴さんもいて、筑波大とかでも競ることがあまりなかったので、勝負を決める最後の1プレーはあれが初めてでした」と勝敗に直結する場面でプレーをしたことがなかったと明かす。若い馬場にとって結果を受け止めることは重要だが、それ以上に最後の場面を託されたという経験もまた大切だ。「この先きっと、この試合が生きてくる。周りを見返してやれと言ってくれました」とチームメートから激励の言葉をもらったという。
鳴り物入りでA東京に加入した馬場は、日本代表に定着し、昨シーズンはリーグ制覇と新人王受賞を達成するなど成功を積み重ねている。だがこうした苦い経験も、自らをより成長させてくれるものだ。今回の失敗をバネにし、試合を決定づける馬場の姿が目に浮かぶ。