東藤なな子

「恩塚さんの求めていることを自分の中に落とし込めている感覚がありました」

パリ五輪での金メダル獲得へ向けて新たなスタートをき切った女子日本代表は、東京五輪でも中心を担った百戦錬磨のベテラン選手たちが健在である一方で、若い選手たちも多く、代表合宿に招集され切磋琢磨している。そんな伸び盛りの新世代の中において、5月に行われたオーストラリア遠征で一際目立つ活躍を見せたのが東藤なな子だった。

東藤は海外の自分より大きな相手にも当たり負けしないタフなディフェンスが持ち味で、それが東京五輪代表に選出される決め手にもなった。それに加えオーストラリア代表との強化試合では、ゴール下への力強いドライブに3ポイントシュートと積極的なプレーを見せ、オフェンス面での貢献も目立った。特に全3試合の内、初戦では27得点の大暴れと攻守両方で頼りになる存在であることを証明した。

恩塚亨ヘッドコーチの下では、東京五輪直後に行われた若手主体のアジアカップ2021以来のメンバー入りとなっている東藤だが、オーストラリア遠征ではスタッツだけでなく、新指揮官のスタイルへの適応にも好感触を得ている。「トム(ホーバス)さんから恩塚さんに変わってアジアカップにも出場しましたが、今回のオーストラリア遠征で、恩塚さんの求めていることを自分の中に落とし込めている感覚がありました。ディフェンスで全員が共通理解でプレーすることができたと思います」

また、東京五輪で世界相手に通用したディフェンスについては、次のように手応えと課題を語る。「オリンピックの時は、フィジカルで負けていない印象でした。今回も自分の脚力を生かせて頑張れたところはありましたが、ボックスアウトなどペイント内の部分ではもう少し身体の使い方を鍛えていかなければいけないと思いました」

東藤なな子

アジアカップの悔しさを晴らし「今回の遠征で力を発揮できた」

東京五輪の時と違い最年少ではなくなったとはいえ、21歳の東藤は年齢で言うと下の部類に入る。しかし、五輪の大舞台を経験し、「オリンピックが終わって、11人の先輩たちのようになりたいと思いました」と、年齢に関係なくチームにより影響を与えられる存在になりたいと意識している。

だからこそ、アジアカップでチームは優勝したものの、東藤本人としては不完全燃焼に終わったと反省しきりだった。「オリンピックの時は、自分の役割を果たせたらいいという目標設定で、そこからレベルアップしたいとアジアカップに臨みました。ただ、大会ではいつも(赤穂)ひまわりさんと交代で出ていましたが、力になれずにいました」

しかし、「アジアカップでは五輪で得たことを出せなかった悔しさがありました。その悔しさがあったから、今回の遠征で力を発揮できたと思います」と語ったように、オーストラリア遠征では雪辱をしっかり果たした。そして、図らずも27得点を挙げた試合は、赤穂がファウルトラブルに陥っており、赤穂不在の状況も補ってあまりあるパフォーマンスだった。

また、「同世代の野口さくらや平下(愛佳)がエネルギッシュにプレーしてくれると、自分も勇気づけられます。彼女たちが作ってくれた良い流れで力が出てくることはありました」とも語ったように、年下や同世代の選手が増えたことを良い刺激に変えているという。

この週末に行われるトルコとの強化試合は、東藤にとって存在感を高める絶好のチャンスとなる。そのためにも引き続き守備だけでなく、攻撃でもチームに貢献していきたいと語る。「トルコはアジャスト能力が高く、ディフェンスもプレッシャーが激しいと言われました。今までのオフェンスが通用しない部分もあると思いますが、そこで共通理解を持って工夫してプレーしていきたいです。自分はディフェンスが一番期待されていると思いますが、オフェンスでも貢献し、数字に残る部分でも積極的に攻めていきたいです」

日本代表の東藤としては、今週末は東京五輪前の強化試合以来となる有観客でのプレーとなり、このように意気込みを語った。「私にとって久しぶりの日本での代表ゲームで、皆さんの前でプレーできるのが楽しみです。パリ五輪に向けていろいろなことに挑戦して成長していきたいです。応援よろしくお願いいたします」

東藤は代表でのキャリアを着実に積み重ねているが、まだ21歳と多くの可能性を秘めている。どこまでステップアップしていくのか、その進化の過程を見ていけることは楽しみに他ならない。