[CLOSE UP]ザック・バランスキー(アルバルク東京)日本人より日本人っぽい男は『仕事人』として成長中

2016/11/10
Bリーグ&国内
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文=松原貴実 写真=野口岳彦

「新しいことにもどんどんチャレンジできている」

昨シーズンのチームから6人のメンバーが入れ替わったアルバルク東京の中で、2年目を迎えたザック・バランスキーの成長が光る。アーリーエントリー期間を経て迎えたルーキーシーズンではなかなか出番が回ってこなかったが、終盤、ケガで戦列を離れたマイケル・パーカー(現千葉ジェッツ)に代わって先発出場のチャンスをつかんだ。ここでしっかり仕事をこなしたことが伊藤拓摩ヘッドコーチの信頼につながったのだろう。

今シーズンはベンチスタートながら平均20分を超すプレータイムを得て、チームを回す上で欠かせない戦力となった。11月6日の秋田ノーザンハピネッツ戦では、第1クォーター残り4分に竹内譲次と交代してコートに出るとすかさず3ポイントシュートを沈め、その後も積極的にゴールにアタックして14得点をマーク。秋田のエース田口成浩のシュートをブロックしたかと思えば、味方へ絶妙なアシストパスを配給するなど攻守にわたって存在感を示した。試合は86-55で圧勝。バランスキーは初めてのゲームMVPとして大きな拍手を浴びた。

ヒーローインタビューの際、その流暢な日本語に場内がどよめいた。なぜそんなに驚かれるのか、本人は不思議だったかもしれない。毎日、ごくあたりまえに日本語を話す。日本で生まれ、4歳の時に一時帰国したものの10歳から再び日本に移り住み、以来日本で育ったバランスキーにとって、日本語はもう一つの母国語だ。

国籍が違っても『日本で義務教育を終了した者は日本人選手としてみなされる』というBリーグのルールに適応しており、選手登録も『日本人選手』となる。知らないファンは見た目とのギャップに驚くかもしれないが、チームメートたちには「日本人以上に日本人っぽい男」と言われ、話す語彙の豊かさも「日本人以上」らしい。大勢の取材陣に囲まれても物怖じすることなく、返ってくるのは明快な日本語だ。

「去年はプレータイムが少なくて自分がやれることも少なかったですけど、今年はやりたいことはもちろん、新しいことにもどんどんチャレンジできていると思います。譲次さんと交代することが多いですが、別にそれが固定されているわけではなくて、基本的に僕と譲次さんとトロイ(ギレンウォーター)とドリュー(アンドリュー・ネイミック)の4人で相手のビックを守るという感じです」

「どんな状況の中でも決してネガティブにならない」

200cmを超す3人に比べ193cmとサイズがない自分が違う武器を持たなくてならないことは承知している。そのためオフシーズンは3ポイントシュートの練習に力を注いだ。

「今日の秋田戦で言えばスィッチしてモリソン(スコット・モリソン211cm)に付くと、やっぱりパワーで負けてしまいます。もっとフィジカルを強くしたくて体を作っている最中ですが、それよりも今、必要なのはパワーで負ける部分をどこでカバーするかということです。今年はシュート練習をすごくやってきたことで、3ポイントシュートにも自信が持てるようになりました。相手のパワーに負けてゴール下で決められても、シュートで3点返せば差は縮まります。確かにビッグマンの中に入ると自分の身長は低いですが、マイナス面だけを見るのではなく、逆に自分のアドバンテージにできるようにしたいです」

そのためには、練習中も先輩たちから学べることはなんでも吸収したい。「ドリューやトロイは世界でプレーしてきた選手だし、譲次さんも日本を代表する選手。毎日、すごく勉強になります。今、自分が身に付けなくてはいけないのはピック&ロールのユーザー側(スクリーンをかけてもらう側)のディフェンスなので、それを学んでいるところです」

メンタル面でお手本にしているのは正中岳城、二ノ宮康平という2人の先輩だ。「去年プレータイムがもらえなかった時期、どう気持ちの整理をしたらいいのか分からなくなって、ちょっと心が折れそうになりました。だけど、正中さんや二ノ宮さんはどんなに試合に出られなくても誰よりハードに練習にしている。それがものすごく自分の励みになりました。2人の背中があったからこそ自分も腐らず努力できた。それが今年の自分につながっていると思います」

2人の先輩に教わったのは『どんな状況の中でも決してネガティブにならないこと』――。今もバランスキーが繰り返し自分に言い聞かせる言葉でもある。それを試されるような展開になったのは翌7日の秋田戦。出だしから秋田の気迫に圧倒されたアルバルク東京は攻守で精彩を欠き、31分近く出場したバランスキーの3ポイントシュートも3本放って成功ゼロに終わった。前日に31点差で勝利したチームに終始ゲームを支配され64-78で敗北。その経験は苦かったが、それもまた長いシーズンを戦う上での糧としなければならない。

「今年の目標は『仕事人になること』です。得点だけではなくディフェンスでも貢献できる仕事人になりたい。ザックが出た時は必ず安定した力を発揮すると、みんなから信頼される選手になれるよう、明日からまた頑張ります」

次戦は11月19日、20日のレバンガ北海道戦。今シーズン初の顔合わせとなるだけに両者とも気合いの入った熱い闘いが期待できそうだ。