「ここまで来れたという思いは少なからずあります」
秋田ノーザンハピネッツは三遠ネオフェニックスとのレギュラーシーズン最終戦に85-76で勝利し、ライバルのシーホース三河とサンロッカーズ渋谷がともに敗れたことで、チャンピオンシップ最後の一枠をつかみ取った。
ライバルチームよりも早い時間に試合が開始されたため、試合を終えた秋田は他会場の試合を固唾をのんで見守っていた。古川孝敏は「見るのはしんどかった」と、その時を振り返る。「試合を終えた体育館でみんなでストレッチとかやることをやりながら結果を待っていました。僕らにはフォローできないことなので、なんとか出場できるように頼むという思いでした。自分たちがチームとしてやれることはやり切れたので、あとはみんなで待つだけでした」
先に三河の試合が終わり、後はSR渋谷と千葉ジェッツの結果を待つだけだった。千葉の1点リードで迎えた残り12.5秒、富樫勇樹の3ポイントシュートによってほぼ試合の勝敗は決した。古川は勝利が近づいたことよりも「それを決めるのかって感じでした。シンプルにすごいな」と、クラッチショットを決めた富樫のプレーに驚愕したという。
SR渋谷が千葉に敗れたことで秋田のチャンピオンシップ進出が決まった。古川も「個人としてもうれしいですし、クラブ初のチャンピオンシップになるので素直にうれしいです。まだシーズンが終わらずにみんなと戦えるのがうれしい」と、喜びを嚙みしめた。
秋田の歴史を変え、シーズン最終戦での劇的なチャンピオンシップ進出なのだから喜びもひとしおだろう。だが、古川は「ホッとしている部分もありますが、準備の段階だなって。次どうするかなという気持ちが強いです」と、すでに次を見据えていた。
「気持ちを切らさずに戦い続けることができた」
ラスト10試合となった川崎ブレイブサンダース戦で、秋田は最大19点差を覆す大逆転勝利を収めたことで勢いに乗るかと思われた。しかし、三河との直接対決で連敗し、そこから悪夢の6連敗を喫した。古川も「茨城ロボッツ戦に負けて、大分堪えました。終わったって思ったところも正直ありました」と当時を振り返る。
ただ、秋田はそこから立て直し、レギュラーシーズンを4連勝で締めくくったことで奇跡を呼び込んだ。パフォーマンスが低下してもおかしくはない状況だったが、メンタルダウンしなかったことが一番大きかったと古川は言う。「ここでみんながバラバラになっちゃいけないと個人的に感じていました。どんな状況でもチームが一つになって、前を向いてポジティブに支え合って全員で戦い抜くことにフォーカスしていました。チームとしてもそんな話が出たし、気持ちを切らさずに戦い続けることができたと思います」
古川は初年度にファイナルMVPを獲得し、その後2年在籍した琉球ゴールデンキングスでもポストシーズンに出場してきた、言わばチャンピオンシップ請負人とも呼べる存在だ。それだけに秋田を初のチャンピオンシップに導いたことで少なくはない達成感を感じているが、優勝が目標という姿勢にブレはない。
「もちろん、チャンピオンシップ進出が簡単なことではないとは理解しているので、満足はしてないですけど、チームに3年在籍した中で少しずつチームとして良くなってきてここまで来れたという思いはあります。でもここに来ることが最後の目標ではなく、目標として掲げているのは優勝です。それを勝ち取りたいと思ってやってきました」
秋田は一つの大きな壁を乗り越えた。ただ、その先にある栄光をつかむにはファンの後押しが必要となってくる。古川はファンに感謝を伝えるとともに、これまで以上のサポートを求めた。「みなさんの支えと応援でここまで来れました。またここから一緒に戦えることがうれしいです。まだまだシーズンは終わりじゃないので気持ちを引き締めて戦っていきたます。クレイジーなアツい熱を届けてくれると信じているので、一緒に戦ってください」
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