ステフとワインを空けた翌日から3連勝で初優勝
この4年で3回の優勝を成し遂げたウォリアーズは、NBA史に残る『王朝時代』を築いた。だが、スティーブ・カー体制となって初の栄冠に輝いた2014-15シーズンのプレーオフに、苦しい戦いを強いられた。
ペリカンズとのファーストラウンドはスウィープ(4勝0敗)で突破し、続くカンファレンス・セミファイナルでは、堅守を誇るグリズリーズと激突した。第2戦から連敗を喫し、第3戦を終えた時点で1勝2敗とビハインドを背負う展開になった。ドレイモンド・グリーンは、先月日本に滞在した際に『ESPN』とのインタビューに応じ、エースであるステフィン・カリーとのエピソードについて聞かれ、3年半前のプレーオフでの話を始めた。
「ステフのイメージを守れる話にしないといけないね」と、笑いながら語り始めたグリーンは、「ステフとの話で自分のお気に入りは、俺たちが初めてタイトルを獲得する前のことなんだ」と、続けた。
「あの時、俺たちはメンフィスでの試合を終えて1勝2敗だった。ステフは良いプレーが出来ていなくて、まるで世界が崩壊してしまうかのようだった。彼がホテルの部屋で何もせずにいたから、電話して飲みに誘った。2人でメンフィスのブルース・シティー・カフェに出かけて、飲みまくって、ジャンクな料理を食べまくったよ。楽しい夜だった。それで、第4戦から3連勝してシリーズを勝ち上がれたんだ。今思うと、あの瞬間が始まりだった。もしかしたら、まったく逆の結果になっていたかもしれなかったわけだからね。(第3戦の)結果から頭を切り替える必要があったんだ」
カリーが調子を取り戻したウォリアーズは、ロケッツとのカンファレンス・ファイナル第1戦から3連勝して王手をかけ、第5戦で勝ち上がりを決めた。そして、レブロン・ジェームズのキャバリアーズとファイナルで対戦した。キャブズは、ファーストラウンドでケビン・ラブが肩を痛めて戦線離脱し、カイリー・アービングもファイナル第1戦でひざを負傷してチームを離れたが、第2戦から連勝して主導権を掴みかけた。連敗した試合でまたも精彩を欠いたカリーを勇気づけるため、グリーンは敵地での第3戦後、エースの部屋のドアを叩いた。
「ステフの部屋にワインを持って行ったのさ。俺たち2人だけでワインを空けて、第4戦から3連勝で優勝できた。あの時期に彼と過ごした瞬間は一生忘れない。彼は流石だよ」
翌シーズンに前人未到の73勝9敗を記録し、20年ぶりにNBA年間最多勝利記録を更新したウォリアーズだったが、キャブズとのファイナルでは3勝1敗と王手をかけながら逆転負けを味わった史上初のチームになった。そして2016年のオフにケビン・デュラントを獲得し、現在に至っている。
もしグリーンが機転を利かせてカリーを夜の街に誘わなかったら、もしファイナル中にカリーのドアをノックしなかったら、今のウォリアーズはなかったかもしれない。スリーピート(3連覇)達成間違いなしと言われて臨む今シーズンも、後に語られるエピソードが生まれるかもしれない。