貫いた全力プレー「出し切って、良い表情でやろう」
「6年ぶりにファイナルの舞台に立てたので、このチャンスを無駄にしたくなかった。負けたら終わりだったので、もうやるしかないという気持ちでした」
富士通レッドウェーブの町田瑠唯は、トヨタ自動車アンテロープスとのWリーグファイナル第2戦を迎えるにあたり、静かなる闘志を燃やしていた。しかし、結果はトヨタ自動車の強力なインサイドアタックに苦しみ、71-87で敗れ、悲願の初優勝を逃した。
町田は「自分たちのやりたいディフェンスやオフェンスをやり続けられなかったことは、間違いないかなと思います。自分たちのディフェンスが機能しなくなった時に相手にペースを持っていかれてしまいました」と敗因を語った。
宮澤夕貴のファウルトラブルもあり、不利となったインサイドを攻め立てられた富士通は、攻守ともに上手くいかず10点前後を追いかける展開に。そして、第2クォーター終盤にはプレーオフMVPを受賞した山本麻衣に3ポイントシュートを決められ、18点ものビハインドを背負った。だが、ここで町田は果敢にアタックし、ラスト2ポゼッション連続でシュートを決め切り、逆転の望みを繋げると、第3クォーター終了時点で9点までビハインドを戻した。
町田は言う。「前半は自分のペイントタッチも少なかったし、パスが外で回っているだけで、良いシュートを作れていなかったからアシストが伸びなかったです。後半はピックからの1対1ではなく、自分の1対1からペイントタッチをしてキックアウトしたり、流れを作ることを意識しました」
トヨタ自動車がスイッチで対応してきたことで、スクリーンにヒットさせてもズレが生まれず、スペースもなかったためにオフェンスが停滞した。だが、町田が個で打開したことでオフェンスにリズムが生まれ、前半は29点に留まった得点が後半は42点にまで増加した。
それでも、オコエ桃仁花までファウルトラブルとなり、インサイドの不利を最後まで埋めることができずに完敗を喫した。町田も「自分たちの武器であるディフェンスがやれなかった」と、あらためて持ち味である守備が機能しなかったことを悔やんだ。
最終クォーター開始5分でビハインドは20の大台に乗り、その時点で勝敗はほぼ決していた。だが、町田は最後まで全力プレーを貫いた。「残り2分くらいでしたが、出し切って、良い表情でやろうということをみんなに伝えました」と語ったように、チームメートも町田の鼓舞に必死で応えた。トランジションを操り、アシストを量産していく町田の姿に心を震わせた人もいたはずだ。
シーズンが終了し、これから町田はWNBAワシントン・ミスティクスと合流する。延期したオールスターゲームに出場できないため、日本で町田がプレーする姿を見れるのは来シーズン以降となる。『一回り成長して帰ってくる』、そう思わせるような全力プレーだった。