「第1クォーターがすべて」、出だしでつまずき16年ぶりファイナル出場を逃す
Wリーグのプレーオフ、セミファイナルでENEOSサンフワラーズは富士通レッドウェーブに連敗し、実に16年ぶりとなるファイナル進出を逃してしまった。初戦は58-67とオフェンスが機能せずに敗れたENEOSだが、第2戦も出だしから富士通のプレッシャーに後手となり、人が動かなかった前日の反省点を改善できずに、大黒柱の渡嘉敷来夢がシュートを打つ状況を作り出せなかった。そして周囲との連携なく1対1で強引に攻めてはタフショット、ターンオーバーを繰り返してしまい第1クォーターで4-19と大きく出遅れた。
その後、意地を見せ第4クォーター終盤に5点差まで詰めはしたが、最初から最後まで富士通に主導権を握らせてしまう中での終戦となった。徹底マークを受ける中でも15得点6リバウンド3アシストを挙げ、攻守でチームを支えた渡嘉敷は「本当に第1クォーターがすべて」と敗因を語る。
右膝前十字靭帯の重傷を負った渡嘉敷を欠いた昨シーズン、ENEOSはファイナルでトヨタ自動車アンテロープスに敗れ、リーグ連覇が11で途切れた。だが、今シーズンは16年ぶりとなるファイナル進出すら逃す結果となった。
「正直に悔しいです」と率直な思いを明かす渡嘉敷だが、一方ですでに視線は来シーズンの逆襲へと向いている。「落ち込んでも仕方がないですし、引退のシーズンじゃなくて良かったと思っています。次はファイナルの舞台に必ずチーム全員で立って優勝することで、今年、去年の経験があったからこそのうれしさや大切さを感じられる。他のチームはいつもこういう気持ちを味わっていたんだなと今は思っています。これで自分が良かったところとダメなところが明確になったから、次のシーズンに向けて走り出そうと若い子たちに伝えました」
大ケガから復帰のシーズン「今の自分には満足していない」
あらためて今回の敗戦は林咲希と岡本彩也花という2人のシューターが不在だったことが大きな要因となった。彼女たちがいないことで、富士通がカバーすべきスペースは狭くなる。その結果として、ENEOSの強みであるインサイドアタックを抑えやすくなった点は間違いない。
だが、渡嘉敷はそれを言い訳にはしない。この敗戦をチーム、そして自身がより成長するための糧にすることしか考えていない。「最後まで全員で踏ん張ることができたのは次に繋がります。自分は他の選手よりも経験もあるので、若い子たちにもっと伝えていけば良いチームになっていきます。今から来シーズンに向けて良いイメージを持ってしっかりリフレッシュしたいです」
膝の大ケガからの復帰となったシーズンを振り返ってもらうと、最初は故障の再発との恐怖心はあったと言う。「まだ復帰して1年もたっていないですし、こういうシーズンになるだろうなとは感じていました。プレーしている中でケガのシーンがよぎり、着地した時に大丈夫かなとか、人がいるかとか気にはなりました」
だが、チームメートの協力もあり、今の彼女にそういう不安はない。「慣らすではないですが、恐怖心が取れればなとプレーしていました。そこからみんながパスをくれて、試合に出続けることができたので、恐怖心はなくなりました。今は『こういうもんかな』という気持ちです。でも今の自分に満足していないので、もう一年また、自分の膝と向き合いながらやっていきたいです」
悔しい結果になったが、若手がプレーオフの大舞台で経験を積めたことは大きなプラス材料だ。そして、渡嘉敷自身、ケガの再発もなく、ワールドカップ最終予選を含めた長いシーズンを乗り切れたことは大きな自信となった。
「自分はまだ強くなれると思っています」
束の間の休息を終え、より進化した彼女が9月のワールドカップ、その後のリーグ戦で今シーズン以上に大暴れする姿が楽しみだ。