中山拓哉

前田ヘッドコーチ「中山がすべてを持って行ってくれた」

4月10日、川崎ブレイブサンダースと対戦した秋田ノーザンハピネッツは最終クォーターに19点のビハインドを背負いながらも猛追し、中山拓哉がハーフコートから放った3ポイントシュートがタイムアップと同時にリングに吸い込まれ、87-86の大逆転勝利を収めた。

試合後、前田顕蔵ヘッドコーチが「中山がすべてを持って行ってくれた」と語ったように、秋田にとっては最高の結果となった。だが、この劇的なブザービーターは中山のミスから生まれたモノだった。藤井祐眞に2本のフリースローを決められて迎えた残り14.7秒、すでにタイムアウトを使い切っていたため、秋田は自陣からのリスタートに。残り時間を考えれば、早めに3ポイントシュートを狙うのが普通だが、ボールを運んだ中山は前が空いたためにドライブで確実な2点を取りに行った。

前田ヘッドコーチが「3点という指示でした。古川(孝敏)選手がワイドオープンだったんですけど、行ってしまったというか」とコメントしたように、やはりこの場面では3ポイントシュートを狙うのがセオリーだ。中山も自身のミスと認め、そのシーンを振り返った。「3ポイントシュートを狙いたかったんですけど、シューターを見た時にそこにタイトについていたので。ファウルゲームに持っていって次のポゼッションで4、5秒残る中でシューターが打てればいいのかなと思いました。スリーを狙わないといけないところでの2ポイントは僕自身のミスです」

中山も3ポイントシュートが必要なことは分かっていたが、「空いたかなと思ったんですけど、僕がパスを出しづらかったのもあり、見えたのも遅かったので出せなかった」と語ったように、2点を取りに行ったのは苦渋の決断だった。しかし、結果的にこの選択が功を奏した。すぐさまファウルゲームにいくと、ここまで6本連続でフリースローを決めていた藤井が1本目をミスし、同点ではなく逆転のチャンスが生まれた。そして、冒頭の瞬間が訪れた。

リーグ史に残るほどの逆転劇だったが、前田ヘッドコーチは冷静にこの試合を振り返った。「あのシュートが入ったから勝てただけで、ずっと苦しかったのは間違いないです。40分を通して非常に苦しい展開ではあったんですけど、アグレッシブにあきらめずにやってくれたことがこの勝利に繋がりました。正直、コルトン(アイバーソン)選手がいなくなって、チームとしては自信をなくしていました。不安になっていた状況の中で昨日完敗したので、今日の勝利は非常に大きいと思います」

秋田は4月6日のサンロッカーズ渋谷戦でアイバーソンが左足関節捻挫を負い、この試合に帯同していなかった。復帰に関しての詳しい情報は公開されていないが、このタイミングでの外国籍選手の離脱はあまりにも痛い。さらに言えば、現在ワイルドカード2位で、今後も上位クラブとの対戦が続く秋田にとってはなおさらだ。

それでも中山はクラブ初のチャンピオンシップ進出を、この試合のように全くあきらめていない。「昨シーズンもカディーム・コールビー選手が途中で出られなくなってしまったので、僕たちにとっては初めてのことではないです。それでもやらなきゃいけないという思いがずっとありました。本当にチャンピオンシップを狙える位置にいるので、誰がいる、いないじゃなくて、チームとしてやらないといけないことを40分間やり続けていきます」

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