渡邊雄太

文=鈴木健一郎 写真=Getty Images

「何も恐れることはない、という感じでやれました」

グリズリーズはプレシーズンマッチの3試合目、ホームにペイサーズを迎えた。注目の渡邊雄太が投入されたのは後半、長いリーチを生かしたディフェンスでまずは自分の役割を果たしていたが、第4クォーターに入ってチャンスが訪れる。

ディフェンスリバウンドを取って速攻に転じた渡邊は、リターンのパスを受けてそのままレイアップを沈め、グリズリーズでの初得点を挙げる。続いてはハーフコートにこぼれたルーズボールを拾ってそのまま一人で走り、ボースハンドのダンク。イージーなチャンスではあれ、速い展開を自ら作り出しての2つの得点で渡邊は勢いに乗った。

極め付けは3点ビハインドで迎えた残り6秒だった。3ポイントシュートしかない状況で警戒されているにもかかわらず、目の前のチェックをモノともせずにバックボードを使った3ポイントシュートを沈めて94-94の同点に。「コーチが自分のためにプレーをセットしてくれていたので、どういう状況になっても必ずシュートを打つことしか考えていませんでした」と渡邊が振り返る値千金の3ポイントシュートが決まったことで試合は延長戦に入り、渡邊は自らの実力をアピールする『追加の5分』を得た。

残り3分、味方がブロックショットしたこぼれ球を拾った渡邊は迷わずボールプッシュ。アタッキングエリアに入り、相手の戻りが早いと見てスピードを落とすかと思いきや、クロスオーバーから再び加速してアタック。相手3人に囲まれながらもリムに向かって飛び込み、フィンガーロールレイアップでフィニッシュ。最後はシンプルなスクリーンプレーから得たチャンスをプルアップジャンパーで確実に決めて103-99とペイサーズを突き放した。

試合は109-104でグリズリーズの勝利。渡邊は21分の出場でフィールドゴール8本中5本成功の11得点、3リバウンド。その数字以上のインパクトを残したと言える。

試合後の渡邉はインタビューに応じ、自身のキャリアにとって大きな影響をもたらすであろう今日のゲームをこう振り返った。「昨日は自分にとっては最悪な試合の入り方でした。NBAでの初めてのゲームだったので。でも今日は『何も恐れることはない』という感じでやれました。楽しめましたし、チームメートやコーチが常に自分に言葉をかけてくれて感謝しています」

残念ながらプレシーズンマッチとあって客の入りはイマイチだったが、全員の心をつかむインパクトのある活躍だったと言える。またコーチ陣やチームメートにとっても最高のアピールになった。