川崎ブレイブサンダース

文・写真=鈴木栄一

苦しい展開を強いらる川崎、守備で流れを呼び込む

10月6日、川崎ブレイブサンダースが敵地で千葉ジェッツと対戦した。最大21点差をつけられる劣勢を後半に入っての猛攻で追いつくと、最後は辻直人の決勝弾でひっくり返し、68-66の大逆転勝利を収めた。これで川崎は『先出し開幕』となった4日の試合に続く白星で、千葉から価値ある敵地での連勝を達成している。

この試合、川崎は一昨日に続いてニック・ファジーカスが欠場。一方、千葉は守備力をより重視して田口成浩から石井講祐、相手の外国籍との兼ね合いを考えてジョシュ・ダンカンからマイケル・パーカーと先発を2人変更して臨んだ。

第1クォーター、千葉は4日の反省からディフェンスの修正がうまくいき、計8つのターンオーバーを奪うなど川崎のオフェンスを封じ込めて20-11と先行する。第2クォーター、辻直人、シェーン・エドワーズとファウルトラブルが続く川崎に対し、千葉は残り約5分半で33-12と大きく突き放す。

だが、川崎はここで点は取れないが、守備で踏ん張る。残り1分を切ってから長谷川技が連続3ポイントシュートを沈めて12点差と、流れを引き戻して前半を終えた。

後半開始早々、川崎の北卓也ヘッドコーチが「千葉のプレッシャーディフェンスに対しての指示がうまくいきました。そして千葉さんのディフェンスの強度が落ちたこともあって走れました」と振り返る猛攻が始まる。13連続得点などで一気に追い上げた川崎は、終了直前に速攻から青木保憲がレイアップを沈め、46-48と肉薄してこのクォーターを終える

川崎ブレイブサンダース

劣勢に耐え、我慢したことで実現した大逆転勝利

勝負の第4クォーター、川崎はエドワーズ、千葉はジョシュ・ダンカンが軸となり、一進一退の攻防が続く。1点を追う残り14秒、川崎は辻が値千金の3ポイントシュートを沈め、土壇場でリードを奪った。直後の攻撃、千葉は富樫勇樹が3ポイントシュートを狙うが失敗。川崎が劇的勝利を飾った。

昨シーズンの川崎は、千葉相手に負ける時は序盤に大量リードを許してそのまま大敗していた。しかし、今日は逆のパターン。北ヘッドコーチは劣勢でも慌てなかったことが要因だと語る。「今までだとちょっと点差が離れると、すぐ追いつかなければと外からポンポンとシュートを打ってしまっていました。その結果、相手に走られて逆に点差を広げられていました。それが今回は攻撃でインサイドを使って攻め、入れられても我慢することができました」

また、この日も許したファストブレイクポイントは5点のみと、千葉の十八番であるトランディションオフェンスを封じた点について、「スプリントバックの意識は去年より強くなっています」と手応えを得ている。

川崎ブレイブサンダース

「点差が開いてからオフェンスもディフェンスも雑に」

痛恨の連敗スタートとなった千葉の大野篤史ヘッドコーチは「後半の最初がすべて。前の試合から修正した部分を最初は出してくれていましたが、点差が開いてからオフェンスもディフェンスも雑になってしまった。自分たちで首を締めて、ジワジワとやられてしまいました。ハーフタイムに『後半はもう一度ディフェンスから』と話していたのが、リラックスして試合に入ってしまって残念なゲームになってしまいました」と、自滅だったと試合を振り返る。

これで川崎は、難敵の千葉相手にファジーカス抜きでの価値ある連勝。その原動力となったシェーン・エドワーズ、バーノン・マクリンの新外国籍コンビがはともに個で打開できる力を持っているだけでなく、「シェーン、バーノンはパスがうまく、引きつけてパスをしっかり出せます。それを決め切れているのは収穫でした」と、北ヘッドコーチは周りを生かす術にも長けていることを評価する。

エース抜きでもリーグ屈指の強豪に連勝できる底力と、昨シーズンとは違う粘り強さ。川崎はこれまで以上に手強いチームだと、ライバル、そしてファンに誇示する開幕シリーズとなった。