文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

伊藤ヘッドコーチ「我慢して勝てたことは収穫」

10月29日に船橋アリーナで行われた千葉ジェッツvsアルバルク東京の一戦は、主力3選手が4ファウルを犯し危機的状況に追い込まれながらも、リードを保ち続けたA東京が87-84で千葉を下した。

第1クォーターに6点のリードを奪い主導権を握るも、その後はリードを広げられず接戦となった。ファウルトラブルがその要因に上げられる。第1クォーターに8得点を挙げた菊池祥平、ゲームハイの26得点を挙げたトロイ・ギレンウォーター、チームトップの11リバウンド(4オフェンスリバウンド)の竹内譲次が4ファウルを犯してしまったのだ。

メインの3選手、特にビッグマンがファウルトラブルになりながらも、それでも勝ちきったことは良い経験になったと伊藤拓摩ヘッドコーチは語る。「先週に引き続き、我慢できて集中を切らさずに勝てたことは収穫です」

ファウルトラブルに陥った竹内の使い方が難しかったのではとの質問に対して、竹内への信頼の言葉を発した。「譲次はファウルトラブルになる選手じゃないんですね。本当は(ラスト)5分と思っていたのですが、我慢できなかったです。そこは信頼関係ですね。譲次はファウルしないでしっかり守る選手なので。結果5ファウルにならなかったので、それはそれで良かったです」

第3クォーター終盤、A東京は大きい選手を使わないままゾーンディフェンスを敷いた。そして石井講祐に3ポイントシュートを許すと、その後ゾーンを使うことはなかった。

「先週や先々週の試合で、千葉さんが相当ゾーンに苦しんでいたので、やったらメンタル的にどうかなと思ったのですが、見事に3ポイント決められたので選手には『明日はやらない』と言いました」

一度決められただけでもう少し様子を見ようとは思わなかったか聞いてみると、驚きの答えが返ってきた。「練習、一回もしてないですもん」

思わず笑ってしまったが、もちろん意図はあった。「あの時は4番の選手がいなかったので、そうしたんです。第3クォーターをファウルがなく乗り切れたらいいなって。『どれだけ君たちが賢いか見たい』と言って、そういうの全部考えてゾーンのほうがいいと思ったのですが、練習してないことはできないです」

お互い息を合わせることが一番大事です

練習量が足りないわけではない、旧NBL時代の昨シーズンから6人選手が変わり、そのケミストリーの構築に時間がかかるのは必然である。「6人新しい選手が入ったということは完璧にチームとしては若いチームなんですね。選手の年齢の問題じゃなく。今は我慢しながらこういう試合を終わって、お互い息を合わせることが一番大事です」

最後まで白熱した試合展開だった。残り1分55で77-76と1点差、ギレンウォーターの3ポイントシュートでも突き放せず、タイラー・ストーンと富樫に3ポイントシュートを決められ85-84と再び1点差に。残り7秒からファウルゲームに持ち込み、千葉は取れる限りのあらゆる手段で食らい付いてきた。それでも我慢に我慢を重ねたA東京は、最後はディアンテ・ギャレットがフリースローをしっかり成功させ逃げ切った。

3ポイントシュートの成功数はA東京の3に対し千葉は13(石井5本、富樫4本)と圧倒。それでも2ポイントシュートを65.2%と高確率で決めたことで勝利を引き寄せた。ギレンウォーターが26得点、ギャレットが24得点の固め打ち。千葉は石井とストーンが17得点、富樫とアームストロングが16点を記録している。

非常にタフな試合展開の中、ふと伊藤ヘッドコーチの姿を確認すると、首元のネクタイがなくなっていた。「いつも我慢しようと思ってるんですけど、どうしても汗かいてくると。熱くなりすぎるのがダメなんだと思います」

選手は我慢してプレーできたが、伊藤ヘッドコーチは我慢できなかったようだ。