川崎ブレイブサンダースがリーグ屈指の強豪であることは誰もが認めるところだが、Bリーグになってからの2シーズンはあと一歩のところでタイトルを逃し続けている。だからこそ運営会社がDeNAグループに変更されて迎える初めてのシーズンは、『3度目の正直』としてタイトル奪還を至上命題に掲げて挑むことになる。絶対的なリーダーとしてチームを引っ張る篠山竜青に、10月4日に迫った開幕についての意気込みと覚悟を語ってもらった。
「完璧なポイントガードを追い求める醍醐味」
──開幕は10月4日、B1では他のチームに先駆けて千葉ジェッツと対戦します。注目度の高い試合になりますが、どんな意識で迎えますか?
今、自分たちが持てるものは隠さずに全部ぶつけて、もちろん全力で勝ちに行きます。特に今回はリーグ初年度以来の先出しゲームとして僕らと千葉が選ばれており、他の開幕戦カードに比べてもしっかりやらなきゃいけない。そういう意味では、リーグ全体の3年目のスタートとしての責任を背負って、周囲の期待に応えるゲームにしなければいけないと思います。
結果がどうなるかは分からないですけど、開幕戦がすべてではないです。とにかく気持ちが伝わるゲームを見せたい。戦術がどうこうであったりとか、プレーが噛み合う、噛み合わないとかを別として、見ている人に何か感じてもらえる。「バスケット面白いな」と思ってもらえる試合をしなければいけないです。
──千葉の富樫勇樹選手とは、同じ日本代表のポイントガードということで何かと対比されがちです。プレースタイルは全く異なるタイプですが、そこはどう意識していますか?
「ライバルで」とか「同じポジションで」とか言われますが、ポイントガードにもいろいろな種類があります。僕の目指している、思い描いている理想のポイントガード像と富樫の理想は全く違います。本音で言うと、富樫への対抗意識といったものはあまりないです。なんて言ったらいいのか、エビフライと漬物くらい、僕たちはタイプが違うと思います。
──では、篠山選手が目指しているポイントガード像として、具体的な選手はいますか?
昔のバスケットもたまには見ますけど、今とはバスケット自体が全然違うので、あまりカチッと当てはまる人は正直いません。でも、ぼんやりとですが、自分が描いている理想の自分はいます。そのイメージに近づいている気もしますが、でも近づくたびに、ぼんやりと見えているパーフェクトな自分のイメージが右往左往して遠くに行ってしまうような気もするような……。
完璧なポイントガードが何を指すのかは曖昧ですし、もしかしたら答えはないのかもしれない。ただ、それを追い求めていくのが現役中の醍醐味でもあると思います。表現するのが難しいですけど、分かってしまったらつまらなくなってしまう気もします。でも、そういった中でもしっかり分かっているのは、常にどういう状況でもチームを鼓舞して勝利に向かって押していける選手になることです。
優勝候補筆頭の声に「今のままでは優勝できない」
──今シーズンは外国籍選手のレギュレーション変更がありました。日本国籍を取得したニック・ファジーカス選手と外国籍2人を同時起用することが可能な川崎にとっては有利な変更となりましたが、篠山選手としてはどう受け止めていますか?
僕はそんな簡単になることはないと思っています。このルールになって帰化の部分で川崎が有利というのは確かに言われますけど、良いチームはたくさんいます。この2シーズン、僕らより質の高いバスケットをするチームがいたから優勝できなかったわけで、新しいルールになったのでうちが今のままやっていれば自動的に優勝できるかって言われるとそうではない。今のままでは優勝できないと思いますし、そういう周りの声はあまり気にしていないです。
──ファジーカス選手と外国籍2名が一緒にコートに立った『実質オン3』の時には、司令塔としてどういうゲームメークをしようかと考えることはありますか。
NBLの初年度、今回と同じように外国籍オン2に帰化選手を加えてやったことがあるので、経験が全くないわけではありません。あの時は、その3人に頼ってしまって自分がオフェンスに参加する機会が少なくなりました。チームは優勝と結果は残しましたが、個人的にはあまり納得がいくプレーができなかったです。
ポイントガードとしては、他の4人をしっかりとコントロールする部分で、外国籍選手でも日本人選手でも変わらないです。その中で自分がどう生きるかはNBLの時よりも、今の方が絶対に磨かれているはずです。特に外国人3人にやらせる、やらせないで自分でやるとかではなく、単純に対戦相手の強みと弱み、こっちの強みはどこにあるのかを見極めてやるのが最善で、3人と一緒だからとかあまり意識しすぎないでやろうとは思っています。
「新たな選手とどう積み上げるかは本当に楽しみ」
──今年も川崎は中心選手に変化がなく、コアメンバーが長く一緒にやっている強みは大きいと思います。篠山選手はどのように感じていますか。
それもよく言われますが、今回はまずルールが変わりました。そしてニックが帰化選手で登録し、それプラス2人の外国籍選手が入れ替わっているので、結構リニューアルしたととらえています。いろいろなコンビネーションとか、どういう組み合わせで行くのかを模索しながらやっていかないといけない。誰かが抜けたからその穴がどうこうではなく、新たに加わった選手たちとどう積み上げていくか。そういうところは本当に楽しみでもありますし、新たな気持ちでやっているイメージです。
──今シーズンの変化で言うと、栗原貴宏選手の移籍で日本人では最古参になりました。
他のチームでは僕より上の選手が多くいるので、30歳にして日本人最年長はちょっと早いなとは思います。ただ、別に日本人の最年長になったからどうこうというのは全然なくて、キャプテンとしてずっと長いことやっているので、その部分は特に何も意識はしていないです。
──では、若手を指南する役割など、リーダーやベテランとして意識する部分はありますか?
今は北(卓也)さんがヘッドコーチで、佐藤賢次さんと勝又穣次さんがアシスタントコーチという体制でやっています。自分もセカンドキャリアを考えるわけではないですけど、自分の言葉で若い選手が何かに気づいてくれたりとか、何かのきっかけになってくれたりすることがあったら、それはうれしいですし、モチベーションにもなります。
この7年でいろいろな経験をしてきて、ブレイブサンダースのことはもちろん熟知していますけど、日本代表では長谷川(健志)さん、ルカ(パヴィチェヴィッチ)、(フリオ)ラマスと3人のヘッドコーチを経験して、それに加えてたくさんのアシスタントコーチの方ともコミュニケーションを取って、自分の財産みたいなものはすごく増えてきている気はしています。そういうものを若い選手に還元して、彼らの伸びるきっかけとかになったらそれはすごく楽しいなと思っている段階です。なので、今年は青木(保憲)とか、林(翔太郎)を育てていく一端を担えたらいいなとは漠然と思っています。