「相手のミスを誘うようなディフェンスができれば」
寺嶋良は11月末に行われたワールドカップ予選のWindow1、中国戦2試合目にて代表デビューを果たすと、持ち味であるスピード溢れる高速ドライブで中国ディフェンスを次々と突破。16得点3アシストと奮闘し、33点差と大敗を喫した中にあって数少ない光明となった。
このプレーで指揮官トム・ホーバスの評価を大きく高めた24歳の寺嶋は先日開催された若手中心のアジア競技会向けの合宿、そして今回のワールドカップ予選Window2のメンバーにも招集されている。
今シーズンから所属する広島ドラゴンフライズにおいても、寺嶋はここまで1試合平均11.6得点、4.1アシスト、1.3スティールと見事なスタッツを残している。また、得点面でいうと、3ポイントシュート成功率は45.3%で、現在ランキング2位につけている。昨シーズンの成功率31.3%から大きく向上している点に目が向くが、昨シーズンは1試合平均1.5本だった試投数が今シーズンは平均3.6本と増加している点も注目すべきだ。
ただ、代表においては外から射抜くことが寺嶋に与えられるミッションではないようだ。「役目としては、ドライブからのキックアウトからアシストすることも多くなる。広島みたいにボールが来るのを待ってシュートを打つ機会は少ないと思います。その中でもチャンスを作ってシュートを決めたいです」
このように語った寺嶋だが、ホーバスからは自ら積極的に仕掛けて、相手ディフェンスを切り崩していくことを求めてられていると続ける。「スピードを生かしたプレーで周りの選手を生かしながら自分も点を取れる。そこをコーチは評価してくれているので、点を取ってほしい、存分に発揮してほしいとこの合宿でも言われています」
また、寺嶋は攻撃だけでなく守備もアグレッシブに行い、「流れが悪い時にステイールからレイアップ、相手のミスを誘うようなディフェンスができればいいと思います」と、試合の流れを変えるプレーを生み出したいと意気込んだ。
コロナ禍であり、選手たちはいろいろと行動が制限された中で合宿を送ってきた。選手にとってストレスも溜まりやすい環境だが、寺嶋にとって広島のチームメートであるアイザイア・マーフィーが同じく合宿に参加していることは大きな助けとなったという。「マーフィーは癒しのある選手で、彼を見ると元気になる。練習の後、疲れている時にコミュニケーションを取ると、一瞬でもチームに帰れた気持ちになれますし、彼の存在は大きいです」
今週末の試合で前回と同様のインパクトを残すことができれば、寺嶋は競争が激しい司令塔の生存競争においても定位置獲得に大きく前進できる。そこで大きな鍵となるのは、自分がチームをけん引していくという強いリーダーシップだ。
女子は外国籍選手がいないこともあり、代表選手の大半は所属チームでエースの自覚を持ってプレーし、そこで培われたメンタル面の強さが代表でも発揮されている。一方、男子の場合、Bリーグの所属チームでは外国籍選手がエースを務め、ここ一番の勝負どころでは彼らがシュートを放つことが多い。当然だが、代表に外国籍選手はいない。ホーバスは各選手がそれぞれ自分が代表の中心になっていくメンタリティを持つようにしたいと意識の変革を求めている。だからこそ、寺嶋にも次のような叱咤激励があった。
「アジア競技会の合宿の初日、その前日の宇都宮(ブレックス)戦で25得点を取って試合に勝って合宿に入りましたが、トムさんには『すごいけど、私としては褒めないよ』と言われました。第3クォーターまでに25得点を取って、第4クォーターにほとんどシュートを打たなかったんです。そのことに対して『なんで打たなかったの? 第4クォーターもどんどん打って30得点、40得点を取りに行かないといけないよ』と言われたのは印象に残っています」
司令塔としてチームメートのシュートチャンスを作り出すことは重要だが、少なくとも日本代表において寺嶋が一番に求められているのは、自分で点を取りに行くこと。このメンタルでプレーを継続できれば、中国戦の再現、もしくはそれ以上の大暴れに期待ができるはずだ。