ジョエル・エンビード

「僕は彼が再び快適に感じるように奔走した」

今シーズンのセブンティシクサーズは『ベン・シモンズ問題』に悩まされ続けてきた。

シモンズは昨シーズンの東カンファレンスセミファイナルで深刻なシュートスランプに陥り、自らが打つべき状況でパスをし、ハック戦術の的となってチームが敗退する大きな理由となった。ドック・リバースヘッドコーチの心ない言葉に傷ついたシモンズは多大な罰金を払いながら、シクサーズでプレーすることを拒み続けた。シクサーズはシモンズの能力を高く買っており、GMのダリル・モーリーはシモンズの価値に見合う条件しか飲まない姿勢を明確にしてきた。シーズン中にオールスタークラスの選手同士のトレードが成立することは非常に珍しく、今シーズン中に解決することはないかに思われたが、2月10日のトレードデッドラインにその時がやってきた。

シクサーズはシモンズとセス・カリー、アンドレ・ドラモンド、2022年1巡目指名権、2027年1巡目指名権と交換でジェームズ・ハーデンとポール・ミルサップを獲得した。

リバースヘッドコーチはシーズン序盤こそシモンズの肩を持っていたが、練習態度の悪さに業を煮やして、さじを投げた。それでも、エースのジョエル・エンビードは「兄弟であるベンをサポートしてもらいたい」とファンに投げかけるなど、最後までシモンズを擁護してきた。それでも、トレードが成立し、肩の荷が下りたエンビードはシモンズのことを気にすることをやめたようだ。

シモンズについて「彼は素晴らしい選手でネッツを違うレベルへと引き上げると思う」と、これまでと同様に高く評価したエンビードだが、「僕は彼がシクサーズでプレーできるように、再び快適に感じるように奔走した。タフだったよ。僕はもう、どうでもよくなった」と、正直な思いを告白した。

シモンズが不在ながら、シクサーズは35勝23敗と大きく勝ち越し、東カンファレンス3位でオールスターブレイクを迎えた。それは平均29.6得点、11.2リバウンド、4.5アシストを記録し、MVP候補筆頭と目されるエンビードの活躍があったからに他ならない。

なお、シモンズからはトレードが決まる1週間前に連絡があったというが、現在のエンビードにとってはどうでもいい話なのだろう。新たな相棒であるハーデンについて「彼とのケミストリー構築は簡単だと思う」と、エンビードはすでに前を向いている。試合内容ではなくシモンズについて聞かれることも多い中、エンビードは集中力を切らさずにハイパフォーマンスを続けてきた。悩みの種がなくなったことで、彼は悲願の優勝だけを目指すことができる。シクサーズ、そしてエンビード&ハーデンの新コンビへの注目はさらに増すばかりだ。