ステフィン・カリー

自身初のオールスターMVPに「ずっと忘れられないものになる」

キャバリアーズのファンにとって、ウォリアーズは優勝を阻むライバルであり、そのエースがステフィン・カリーだ。レブロン・ジェームズを擁した時代に毎年のようにNBAファイナルでしのぎを削った時代の記憶はまだ色褪せていない。NBAオールスターゲームのティップオフを前にカリーが入場してきた時、スタンドからはブーイングが浴びせられた。ただ、これがリスペクト込みのものであることはカリーも承知しており、笑顔で受け入れていた。

そのカリーはオールスターで27本中16本の3ポイントシュートを決めて50得点を記録。キャッチ&シュートはもちろん、激しく動いて体勢を流しながら放つシュートも連続で決めて、ブーイングを歓声へと変えた。カリーが所属するのはチーム・レブロンで、キャブズのダリアス・ガーランドとジャレット・アレンもチームメート。自分のプレーをきっかけにファンが後押ししてくれるようになると、カリーの3ポイントシュートは止まらなくなった。

2017年にアンソニー・デイビスが記録したオールスターでの最多得点(52)を2点差で逃したものの、3ポイントシュート成功数は2016年にポール・ジョージが記録した9本を大幅に塗り替えた。カリーにとっては8回目のオールスター出場で、初のMVP受賞となった。

試合は混戦になったが、ヤニス・アデトクンボがジョエル・エンビードとの1on1を制し、デマー・デローザンがクラッチシュートを沈め、最後はレブロン・ジェームズがターンアラウンドジャンプシュートを沈めて163-160でチーム・レブロンが勝利している。

「レブロンとは試合が終わった直後に『完璧な結末になった』と話したよ。正直もう何本かシュートを決めたい気持ちはあったけど、僕が試合を通して活躍してMVPになって、彼がゲームウィナーを決めたんだからね。これ以上の終わり方はなかったと思う」と、試合後の会見でカリーは語った。

『敵地』であるクリーブランドでのパフォーマンスについて「ここでブーイングを浴びるのは初めてのことじゃない。実際、僕は楽しむことができた。ブーイングも僕のエネルギーになるからね。それがどこであれ勝ったり負けたりして、何らかの因縁みたいなものがある。でもここクリーブランドは特にいろんな歴史がある。でも僕は楽しくことができたし、応援してくれた人にもブーイングした人にも感謝しているんだ」

ケガでオールスターには出場できず、中継レポーター役を務めたドレイモンド・グリーンは、試合が終わるとすぐさま「MVP! MVP!」と叫びながらカリーに駆け寄った。カリーはカメラを意識しつつ「お前が2週間も休んでいるから、穴を埋めるためにステップアップしなきゃならないんだ」とジョークで返している。

キャブズファンの敵ではあっても、カリーはオハイオ州アクロンで生まれている。育ったのはシャーロットでも、自分のルーツのある場所でのオールスターは「素晴らしいものだった。楽しすぎてずっと笑っていたよ」と彼は言う。

「やっぱり他のオールスターとは違う感覚があった。このイベントを満喫し、ブーイングまで楽しんで受け入れることができた。ゲームもセレモニーも素晴らしいもので、すべてに感謝したい。この4時間か5時間に起きた出来事はずっと忘れられないものになる。素晴らしいし、パーフェクトだったよ」

中3日の休養を挟んでレギュラーシーズンの後半戦がスタートする。ウォリアーズは『バブル』の2019-20シーズンにリーグ最下位に沈み、昨シーズンもプレーイン・トーナメントに阻まれたが、今シーズンはここまで西カンファレンスの2位で、優勝を争うだけの力を取り戻した。カリーは言う。「この雰囲気をまた味わえてうれしい。僕らは5シーズン連続でファイナルに進み、この2年間はプレーオフを逃し、今は再び優勝を目標にして戦っている。それがどれだけ険しい道かは分かっているけど、この挑戦に身を置いていたかったんだ」