渡嘉敷来夢

「追いかける展開だったけど、すごく楽しめました」

渡嘉敷来夢が『日本のエース』として素晴らしい復活のパフォーマンスを見せた。30分の出場でフィールドゴール9本中5本成功の12得点、加えて8リバウンドと5アシストを記録。数字以上に、最大で20点のビハインドを背負う劣勢の試合でペイントエリア内で踏ん張り、日本の反攻を呼び込むきっかけを作り出した。本来のポテンシャルからすれば、もっとシュートを狙っても良かったのかもしれないが、あくまでチームバスケットの遂行を優先し、世界ランク4位のカナダ代表を相手に延長で逆転する快勝劇に貢献した。

「相手の強さにファウルを取ってもらえなかったりするシーンが何回かあって、少し空回っちゃったのはあります。でもまだ時間があったので、焦ることもなかったです」と、渡嘉敷は劣勢から巻き返した試合展開を振り返る。

「前半は動きが固かった印象で、ハーフタイムに恩塚さんが『いつもと違うよ』とかポジティブな言葉を掛けてくれて、焦ることなく一人ひとりがやるべきことをやってみよう、となりました。なりたい自分に向けてプレーすることで、どんなゲームでもあきらめずにやればひっくり返るんだなと思いました。追いかける展開だったけど、すごく楽しめました」

渡嘉敷は、逆転勝利ができた理由を「最後まであきらめなかったところと、あとは機動力」と分析する。「みんなでやることで相手を疲れさせることができた。誰が出ても同じバスケができるのがウチの強みです」

ただ、それは渡嘉敷の復帰が大きい。渡嘉敷をケガで欠いたオリンピックでは髙田真希がインサイドで重責を担い続ける必要があり、ファウルトラブルがそのままチームの負けに直結する状況で思い切ったプレーに行けないシーンが何度もあった。しかし、髙田と渡嘉敷の揃い踏みとなれば、2人でプレータイムもファウルもシェアできる。オーバータイムでも2人を交互に投入する選手起用は、ガス欠に陥っていたカナダから見れば『贅沢すぎる選手起用』だったはずだ。

渡嘉敷来夢

「見に来れる方は是非会場に来ていただいて、この空気を味わってほしい」

渡嘉敷が膝に大ケガを負って代表活動ができなかった昨年、日本代表は東京オリンピックで銀メダル獲得という歴史的快挙を成し遂げ、その後のアジアカップでは恩塚ヘッドコーチを迎える新体制となり、若手中心のチームで優勝を果たした。渡嘉敷は言わばこの波に乗り遅れた形となったが、こうして代表復帰の初戦で結果を残せたことに大きな手応えを得ている。

「新しいメンバーがいて、ヘッドコーチも代わったチームにしっかりフィットできたと自分自身も感じています。久々の試合ということもあって全部良かったわけではないんですけど、今の自分のレベルを知ることができたのはうれしいと言うか、やっぱり楽しいですね、海外の選手とやるのは」

世界を経験しているだけに、日本代表として世界と戦うことへの渡嘉敷の思いは大きい。自国開催のオリンピックへの出場を逃したことは大きすぎる痛手だったが、それでもキャリアはまだ続くし、今回のようなチャンスを生かすことで挽回はできる。日本代表に戻って来た渡嘉敷は、チームのスタイルに合わせながらも自分らしさを発揮し、難敵相手の勝利という結果を出した。それと同時に、多くのファンの前で日本代表としてプレーできる喜びも久々に味わうものだった。日曜はボスニア・ヘルツェゴビナ戦が控えている。自分たちの素晴らしいバスケを、もっと多くのファンに見てもらいたいという心境は当然出てくるものだ。

「会場に来てたくさんの方にああやって応援してもらえると、選手も力になって後半も踏ん張ることができます。このご時世、あまり簡単に『みんな来て』とは言いにくいですけど、見に来れる方は是非会場に来ていただいて、この空気を味わってほしいです。やっぱり日本でワールドカップ予選をやるって、そうそうない機会なので。海外の選手も含めていろんな選手がいて、Wリーグとはまた違ったバスケが見れると思うので、是非来てください」

もちろん、渡嘉敷はファンの期待と応援にプレーで応えるつもりでいる。「いつも通りと言いますか、高さを生かしたプレーだったり、ディフェンスとリバウンド。そういったところでしっかり貢献していきたいです。というか、貢献します!」