河村勇輝

「まだまだ経験不足だったり実力不足だと思います」

バスケットボール男子日本代表はこのタイミングで招集することのできる若手中心のメンバーでの強化合宿をスタートさせた。

指揮官のトム・ホーバスが「若手を見たかった」と語ったように、平均年齢は23.4歳と若手主体のメンバー構成となり、15名中3名が大学生となった。特別指定選手として今シーズンも横浜ビー・コルセアーズの一員となった河村勇輝はその一人だ。選出について「ワクワクしている」と感想を語ったが、「候補じゃなく選出されることが一番の目標なので、満足せずに合宿の中で学びながらアピールしてきたい」と力強く語った。

河村は福岡第一時代に2年連続でウインターカップを制覇し、在学中に三遠ネオフェニックスに特別指定選手として加入し、B1史上最年少出場、最年少得点記録(18歳8カ月23日)を塗り替えて、高い注目を浴びていた。当時から日本代表のポイントガードになることを目標に掲げ、順調にステップアップを重ねてきたが、河村は「代表のポイントガードになるレベルにあるかと言われると、一つひとつのスキルで足りない部分がたくさんあります」と、客観的に自身を評価した。

「すべてのスキルでもう1つ、2つレベルアップしていかないといけないのは間違いないです。ポイントガードとして流れをつかんで支配するというところは、まだまだ経験不足だったり実力不足だと思います。でも、このトムさんのバスケットを見たり、話を聞いたりする中で、自分のスタイルに合っていと感じることは結構あります。自分の特長を生かせるスタイルだと思っているのでワクワクしています」

Bリーグでの今シーズン、河村はここまで11試合に出場し、平均11.5得点、3.2リバウンド、6.2アシストを記録している。昨シーズンから約1分のプレータイム増にもかかわらず主要スタッツは倍増となり、プロの世界に慣れたことを数字が物語っている。特にフィールドゴール成功率は59.6%と高く、河村も「ドライブからのキックアウトだったり、リング周りのフィニッシュが一番成長した部分」と言う。そして、「トムさんのスタイルはポイントガードを中心としたバスケットで、特にペイントタッチやドライブからのキックアウトを求めていると思います。小柄ではありますけど、小柄だからこそ小さなスペースをかいくぐってドライブするのは一つの武器でもあるので、自分の持っている特徴を最大限に発揮したいです」と意気込んだ。

河村勇輝

「自ずとワールドカップやパリオリンピックへの道も広がります」

ホーバスヘッドコーチは女子日本代表で成功した、速い展開と誰もが3ポイントシュートを打てるスタイルを男子にも持ち込もうと考えており、そのためポイントガードの役割を重要視している。そんなホーバスヘッドコーチは河村に期待する点に判断力を挙げた。「彼の判断力が見たい。若い選手は判断があまり上手じゃないけど、プレッシャーの中での彼の判断、プレーを見たいです」

河村は「もっとやっていかないといけない部分もある」と前置きをしたが、これまでに培ってきたポイントガードの経験や判断力には自信を持っていると言う。「常日頃、判断力というのはポイントガードとして大事な能力の一つだと思っています。シュートセレクションやパスをするタイミングは自分の中でも自信として持っている部分なので、ちゃんとアピールできればいいなと思っています」

前述の通り、河村は代表の正ポイントガードを目指し続けてきた。今回の選出に関して強気な発言はあまりせず、終始足りない部分があるということを強調し、学ぶ姿勢を崩さなかった。それでも、この合宿が目標達成のための大事な足掛かりになることを本能的に理解している。

「ここはステップアップできる場所ですし、トムさんの近くで練習をしたり、試合をこなすことができれば、自ずとワールドカップやパリオリンピックへの道も広がります。そういった意味では、少し現実的になったと思います。日本を代表するたくさんのポイントガードの皆さんとマッチアップしながら学んでいきたい」