JR・スミス

写真=Getty Images

「いずれにしても、自分たちは同じ状況にいたはずだ」

2018年のNBAファイナルから3カ月あまりが経った今も、キャバリアーズのJR・スミスがその第1戦で犯した判断ミスは記憶に新しい。『世紀の凡ミス』とも呼ばれるシーンについて、本人が沈黙を破った。

キャブズが圧倒的に不利と見られた敵地オラクル・アリーナで行われたウォリアーズとのファイナル第1戦で、『迷シーン』は起こった。106-107の1点差でウォリアーズを追っていたキャブズは、第4クォーター残り4.7秒にフリースローを獲得。フリースローラインに立ったジョージ・ヒルは、落ち着いて1本目を沈めて試合は107-107の同点に。2本目をミスしたものの、スミスがリバウンドを押さえ、キャブズが勝負を決めるチャンスを手にした場面だ。

ここで『世紀の凡ミス』が起きた。スミスはチームがリードしていると勘違いし、ドリブルで後方に戻って時間を消費。レブロン・ジェームズの「行け!」との声で我に返った時には手遅れで、試合は延長戦に突入。この凡ミスに救われたウォリアーズは、気持ちを切り替えて初戦をモノにした。

この敗戦によりキャブズが負ったダメージは、精神的なものだけではなかった。第1戦で51得点8リバウンド8アシストという驚異的なパフォーマンスを見せたレブロンが我を忘れるほどに怒り狂い、試合後ロッカールームのホワイトボードを殴打して右手を骨折するアクシデントが起きたのだ。勝負に『たられば』は禁物だが、このシリーズで唯一にして最大の分岐点がこの第1戦であり、『世紀の凡ミス』だった。結果、ウォリアーズはスウィープ(4連勝)で2連覇を達成した。もしキャブズが第1戦で勝利を収めていたら、きっと違った展開になっていただろう。

スミスは、『The Undefeated』に「あのミスはタフだった。でも、第2戦以降も何も変わらなかった。第2戦以降も敗れたという結果を受け止めただけで、自分のミスのせいで第2戦以降の試合に負けたとは考えなかった」と語った。「誰でも間違いは犯す。チームメートが自分を擁護してくれたおかげで、(第1戦のことは)そこまで悪いことのように考えなくて済んだ」

「コーチとも、チーム全員とも話した。みんな自分を100%支持してくれた。確かに自分はシュートを打たなかった。でも、もし自分があの時リバウンドを奪えていなかったら、どうなっていた? いずれにしても、自分たちは同じ状況にいたはずだ。シュートを打っても、外していたかもしれない。その後、どうなっていたと言うんだい?」

「人生ではたくさんの間違いを犯すもの。その中から一つだけを選択して、腹を立てることなんてできない」

スミスはすでに気持ちを2018-19シーズン開幕に向けて切り替えているが、あのシーンは、『The Mistake』として、今後も語り継がれるに違いない。