本橋菜子

取材=小永吉陽子 構成=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「頭の中をシンプルにして得点を狙っていくように」

バスケットボール女子日本代表は昨日、中国に敗れてベスト8進出を逃し、予定よりも早くワールドカップの舞台から去ることになった。ワールドカップで2勝を挙げ、グループリーグを突破したという結果は快挙と言っていいものだが、近年は上回っていた同じアジアの中国にその歩みを阻まれたのは痛恨の一敗だ。相手の高さとフィジカルに圧倒されながらも最後まで勝利を目指したが、チーム全体のコンディションの悪さが足を引っ張った試合となった。

その試合でチームを牽引したのは本橋菜子だ。日本代表として国際大会に出場するのは初の経験ながら先発ポイントガードの重責を託され、大会を通じて22分半のプレータイムを得た本橋は、この中国戦で両チーム最多の25得点を挙げている。髙田真希と宮澤夕貴がディフェンスで手一杯の状況、本橋のドライブと果敢なシュートが日本代表のオフェンスを支え続けた。

負けたら終わりのトーナメントを、本橋は強い気持ちで迎えていた。「今までの半年間で私のプレーを評価してもらって、今回代表に入ってスターティングメンバ―で出させてもらったんですけど、大会に入ってあまり思うようなプレーができていなくて調子も上がってなくて。今日は絶対に何としても、リラックスして自分のプレーをやりたいと思っていました」

グループリーグの3試合を振り返って、本橋の考えは「自分のプレーをやりたい」に行き着いた。「空いたらシュート、出て来たらドライブと、頭の中をシンプルにして得点を狙っていくようにしました。前の試合はドライブしなきゃ、行かなきゃという気持ちが強く、空いているのに狙わずに中に攻めてしまうことが多くて。自分のシュートを第一に考えました」

その結果が25得点。国際大会の経験が抱負な町田瑠唯、昨年のアジアカップのベスト5になった藤岡麻菜美をベンチに置く状況で、指揮官トム・ホーバスは最後まで本橋に試合を託した。本橋はその期待に応えようと、残り1分43秒で79-81と2点差に迫る得点を挙げるも、そこから最後の一伸びがあったのは中国だった。ファウルゲームも功を奏さず、試合終了のブザーとともに本橋がドライブから決めたレイアップが、今大会における日本代表のラストプレーとなった。

本橋菜子

「通用する部分と通用しない部分が見えてきた」

「最後まであきらめないで、出ているメンバーもベンチも一つになって戦えたのは良かったと思うんですけど、相手の3ポイントシュートがたくさん入ってそこに最後までアジャストできませんでした。インサイドも強いので難しい部分だと思いました」と本橋は試合を振り返る。

「最初の3試合はこれまでやってきた日本らしいバスケットをあまり出せなくて、選手同士でもいろいろ話しました。今日の試合で全員が100%を出し切れたことは良かったかな」。収穫をこう語る本橋の頬を涙が伝う。

「緊張はしていました。楽しもうとしていたけど、やっぱりどこかにプレッシャーもあって、なかなかうまく消化できない部分もありました」

ワールドカップはこれで終わり。上位進出は果たせなかったが、それぞれこのテネリフェで得たものを次へ繋げることが大切になる。ワールドカップの舞台でプレーしたこと。ドライブで切り、得点を奪う能力が世界でも通用すると分かったこと。本橋にとってこの2つは大きな収穫だ。同時に課題もはっきりとした。「通用する部分と通用しない部分が見えてきて、その中でもコンスタントに自分の力を発揮できないのは自分に波があるからだと思うので、安定したプレーをできるようになりたいです」

「大会を通じて、やはり私にはまだ経験が足りないと感じました。大事な場面でチームをコントロールすることやゲームの運び方、オフェンスでもディフェンスでも、特にスペインの選手たちは上手いと思いました。もっともっと経験を積んで、頑張っていきたいです」

東京オリンピックまで2年。日本代表としては遅咲きとなった本橋だが、24歳で出場したワールドカップで貴重な経験を得られたはず。この大会をきっかけに、さらなる飛躍に期待したい。