恩塚亨

「アジアカップメンバーと五輪メンバーの融合が今回の大きなポイント」

バスケットボール女子日本代表は、昨年夏の東京オリンピックで銀メダル獲得の快挙を成し遂げた。その1カ月半後には、トム・ホーバスの下でアシスタントコーチを務めた恩塚亨をヘッドコーチに据える新体制でアジアカップに挑み、髙田真希や町田瑠唯など経験豊富な選手が休養して若手中心のチームだったにもかかわらず、新たにキャプテンとなった林咲希を中心に素晴らしい戦いぶりを見せ、大会5連覇を成し遂げた。

新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックが1年延期となったことで、その後の大会日程が詰まっている。今年最大の目標は9月にオーストラリアで行われるワールドカップ。その予選が来月に予定されており、2月10日(木)のカナダ戦、12日(土)のベラルーシ戦、13日(日)のボスニア・ヘルツェゴビナ戦に向けて、日本代表は先週から強化合宿を行っている。

昨日、恩塚ヘッドコーチが取材に応じ「まずワールドカップのチケットを手にすること。この活動はパリ五輪で金メダルを取るという目標に繋がりますし、その先の『バスケットで日本を元気に』というJBAの理念を大切にしながら、皆さまに夢や活力を与えられるような活動を目指していきたい」と抱負を語った。

強化合宿スタート時点で発表された候補選手は19名。ワールドカップ予選の登録は12名で、競争の中でメンバーを絞り込んでいく。オリンピックメンバーにアジアカップで自信をつけた若手、さらに新しい選手も数名加わっており、「アジアカップメンバーと五輪メンバーの融合が今回の大きなポイント。今はアジアカップから導入を始めた『世界一のアジリティ』という強みを最大限生かせるように、原則のインストール、あとはワクワクのポジティブなマインドセットを入れています。それがこれからのチームのアジリティの支えになる」と恩塚は言う。

この『アジリティ』は、アジアカップの時から恩塚が掲げるキーワードだ。「これまでも日本代表はスピードで勝負してきましたが、それを一段階高めたい。速さに幅や深みを持たせたいと思っていて『アジリティ』という言葉にしました。適応能力を伴った速さを発揮し続けることで、先手を取って高さを凌駕したい。その中にはメンタル的な心の切り替えの速さも含まれます」と恩塚は言う。

恩塚亨

「判断力を磨く中で効率良く期待値の高いシュートを打つことを強みに」

今回のメンバーで注目すべきは、渡嘉敷来夢の代表復帰だ。リオ五輪の後はなかなか継続して代表活動に参加できず、強い意欲を持って臨むはずだった東京オリンピックも膝のケガで出場できず。その渡嘉敷が代表に戻って来た。世界と戦う上で高さの不利をスピードや3ポイントシュートでいかに埋めるかをテーマにしてきた日本にとって、髙田と渡嘉敷の揃い踏みは全く別の戦い方の可能性をもたらす。

それでも恩塚は「アジリティを生かして戦うことはアジアカップから変わらない。常に効率や生産性を考えていて。渡嘉敷選手のスピードなのか高さを生かすのかは都度考えている」と言う。「高さの面では幅が広がりました。リバウンド、ポストプレーでの貢献に期待できる。メンタル面でも素晴らしいリーダーシップを発揮してくれていてチームメートに自信を与えたり、集中力が散漫になっている選手を諫められるところも、チームの成長になっているので感謝しています」と、期待値は高い。

目指すバスケのスタイルは、スピードに判断力をプラスした効率の良いバスケだ。「次から次へとプレーを展開していく。しかも良い選択をすることで守備がついてこれないようにして、より良いプレーをするのが私たちの戦術。3ポイントシュートなのかレイアップなのか、そういう判断力を磨く中で効率良く期待値の高いシュートを打つことを強みにしたい」と恩塚は言う。

ワールドカップ予選は16チームを4会場に分けて開催される。日本代表は大阪会場(おおきにアリーナ舞洲)とホームでの戦い。世界の強豪国を相手にどんなバスケットを見せてくれるのか、期待して待ちたい。

女子バスケットボールワールドカップ2022予選 女子日本代表候補選手19名
髙田真希(PF/185cm74kg/デンソーアイリス)
渡嘉敷来夢(C/193cm85kg/ENEOSサンフラワーズ)
近藤楓(SG・SF/173cm62kg/デンソーアイリス)
町田瑠唯(PG/162cm57kg/富士通レッドウェーブ)
宮澤夕貴(SF・PF/183cm73kg/富士通レッドウェーブ)
谷村里佳(PF/185cm87kg/日立ハイテククーガーズ)
本橋菜子(PG/164cm55kg/東京羽田ヴィッキーズ)
三好南穂(SG・SF/167cm57kg/トヨタ自動車アンテロープス)
藤岡麻菜美(PG/169cm57kg/シャンソン化粧品シャンソンVマジック)
林咲希(SG・SF /173cm65kg/ENEOSサンフラワーズ)
馬瓜エブリン(SG・SF/180cm79kg/トヨタ自動車アンテロープス)
宮崎早織(PG/167cm57kg/ENEOSサンフラワーズ)
中田珠未(PF/183cm72kg/ENEOSサンフラワーズ)
?田舞衣(SG・SF/ 175cm67kg/シャンソン化粧品シャンソンVマジック)
赤穂ひまわり(SG・SF /184cm71kg/デンソーアイリス)
馬瓜ステファニー(SF・PF/182cm78kg/トヨタ自動車アンテロープス)
オコエ桃仁花(PF/182cm85kg/富士通レッドウェーブ)
山本麻衣(PG/163cm58kg/トヨタ自動車アンテロープス)
東藤なな子(SG・SF/175cm66kg/トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
[ヘッドコーチ]恩塚亨