『チームの顔』不在の時代、ケンバ・ウォーカーは愛するホーネッツでの飛躍を誓う

2018/09/27
NBA&海外
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ケンバ・ウォーカー

文=神高尚 写真=Getty Images

得意のドライブに加え、シュートも年々向上

選手の発信力が強くなってきたことで、近年のオフシーズンは予想外のスター選手の移籍話が出るようになりました。このオフもフランチャイズプレイヤーとしてチームに長く残ると思われていたカワイ・レナードとデマ-・デローザンのトレードが実現し、先日はジミー・バトラーも長くともに戦ってきたヘッドコーチのティム・シボドーにトレードを要求しています。

「優勝を狙えるチームに行きたい」、「ヘッドコーチと考え方が合わない」、「子供の頃からあこがれているチームに行きたい」など理由は様々ですが、実力が証明されているスター選手は自身がプレーしやすい環境を求める傾向が強くなっています。

そんな中でオールスターガードのケンバ・ウォーカーは、たびたびトレードの噂が浮上しながらもホーネッツでプレーし続ける意向を示しています。チーム最大のスターでありながら年俸は6番目と安く、ベテラン選手を揃えながら2年連続でプレーオフを逃すなど成績も奮わない中でチームへの忠誠心はファンの心に響いています。そして昨シーズンはデル・カリーを抜いてシャーロットの歴代最多得点者になるなど、高いパフォーマンスを披露してもいます。

コネチカット大でNCAAチャンピオンに輝いた実績をひっさげNBA入りしたケンバは、ルーキーシーズンからの4年間で3ポイントシュート成功率が32%を下回っており、シュート力はウィークポイントとされていました。しかし直近の3年間で38.6%と大きく改善したことで、3年連続で平均得点が20点を超える高い得点力を示しています。186cmとサイズはありませんが、ハンドリングとクイックネスを組み合わせたドライブは止めることが難しく、そこにシュート力が加わったことで巧みなシュートフェイクからディフェンスの逆を取るプレーを頻繁に見せます。

この「シュート成功率の改善」は単にシュートが上手くなっただけではありません。全シュートアテンプトの内、ディフェンダーからフリーになった状況でのアテンプトが4シーズン前は48%だったのに対し、昨シーズンは58%まで向上しました。この『状況判断の良さ』こそがケンバ最大の強みです。

5.6アシストは少し物足りないものの、ターンオーバーが2.2とボールを持つことが多い中心選手としては極めて少なく、堅実なプレーぶりが光ります。36勝46敗と10も負け越したホーネッツですが、ケンバがコートにいる時の得失点差は2.6と大きくプラスになっており、1人だけ別格の存在感を発揮していました。

アシストは少ないがミスも少ないケンバの特徴は、そのままホーネッツのチームカラーでもありました。華麗なボール回しは少なくともミスからの失点が少なく、またリーグで最も多くのフリースローを決めたチームでした。ケンバに率いられ堅実な選択肢を選んだホーネッツです。

ところが勝敗別に成績を分けてみると、勝ち試合ではウォリアーズに次ぐリーグ2位の得点を記録しています。上位に並ぶのは好成績のチームばかりの中、負け越したホーネッツが2位にいるというのは「オフェンスが爆発しないと勝てないチーム」になっていたからです。ベテラン揃いでラインナップでのミスが少ないチームでありながら、接戦になると不安定さを露呈してしまいました。ケンバとチームの特徴は一致していましたが、それを勝利に結びつけることができていなかったのです。

そこで今オフのホーネッツは、スパーズのアシスタントコーチを務めていたジェームス・ボレゴを新ヘッドコーチとして迎え入れ、さらに同じくスパーズで多くの優勝を経験したトニー・パーカーを獲得しました。チームの課題を解決するために、優勝するための方法論を知っている人材を招き入れたのです。一方、チームで最も多くのフリースローを打ちながら57.4%の成功率に留まったドワイト・ハワードを放出しました。

スパーズとホーネッツの共通点はファールが少ないディフェンス、ターンオーバーの少ないオフェンスであり、相違点はスパーズの方がアシストは多くフリースローは少ないことでした。そして接戦での強さにも大きな違いがありました。

その点でケンバの特徴を継続させるヘッドコーチの人選と、変化をもたらすためのバックアップポイントガードを的確に補強したと言えます。ミスの少ないスタイルを継続しながら、インサイドでフリースローをもらう方法ではなく、ボールムーブからのアシストを増やし、アウトサイドからの得点を増やしていくのでしょう。ベンチに若手を増やし、そして頼りになるトニー・パーカーが出てくることで接戦での正しいプレーを導いてくれるはずです。ホーネッツはケンバのプレーは変えずに、チームのプレーを変えようとしているのです。

契約最終年を迎えるケンバには開幕後もトレードの噂が流れるでしょう。しかし、ケンバ本人は変わらぬ忠誠心とプレーを続け、新たな仲間とともにホーネッツを勝てるチームに変えることだけを目指すはずです。