2年前に特別指定選手として宇都宮ブレックスに入団したテーブス海は順調な成長曲線を描き、昨シーズンは最優秀新人賞を受賞した。今シーズンの序盤は思うようなパフォーマンスができなかったが、12月中旬にようやく2桁得点を記録すると、それ以降は本来の実力を発揮しつつある。過去2シーズン、テーマを持って取り組んできたテーブスは今シーズンのテーマに「エゴを取り戻す」ことを挙げた。その言葉が示す意味とは?
「この成績で納得するのはちょっと難しいです」
──新型コロナウイルスの感染拡大により試合が中止となり、活動が停止となったチームもありますが、宇都宮は正常通り活動できているようですね。
ありがたいことに練習できています。試合が続いているとあまり調整する時間がない作業をしたり、新しいセットプレーなどを確認しています。なので、あらためてチームとして引き締まった感はあります。
──シーズンの約半分を消化して17勝9敗。主力選手が抜けたにもかかわらず、さすがの好成績という印象ですが、テーブス選手はこの成績をどのようにとらえていますか?
もちろん、客観的に見たら良い成績かもしれないです。でも自分たちはもっと高いところを目指してやっているので、みんなも思っていることだと思うんですけど、この成績で納得するのはちょっと難しいです。開幕2連戦を落としたのも悔しいですし、相手がどうこうというより、自分たちでなんとかできる部分があったからこそ後味が悪いというか。
──長い間主力を務めたライアン・ロシター選手とジェフ・ギブス選手が抜けたことにより、システムの変更があったと思います。そのシステムのへのフィット感はどうでしょう? 直近5試合は先発に起用され、それに伴いパフォーマンスも上がってきました。
今までは2人がボールを運んで起点として組み立てていたことが多かったのですが、2人がいなくなったことで、特に僕はセカンドユニットで自分を起点にオフェンスを組み立てられるようになったのは大きな変化です。特に序盤は納得のいくプレーができていなかったですが、自分が判断する機会が多くなったのでやりやすくなったと思います。
パフォーマンスが上がらなかった原因がシステムなのかは分からないですけど、自分が良いプレーをするだけなのであまり深くは考えなかったです。シュートを決めても問題があるなら別の見方ができますが、自分のプレーを良くすることに集中していました。
ケガ人がいる中で単純にプレータイムが増えたのはありますね。ノビノビとやれる状況になり、自分のプレーが出しやすい環境ではあります。
「『ゴー・トゥー・ガイ』になれる才能は自分でもあると思っています」
──宇都宮に加入した当初、「10分でも大学の30分と同じくらい疲れます。正直、今はBリーグで30分出場する姿は想像できないです」と言っていましたが、その部分で成長を感じますか?
そうですね。当時は状況判断とか考えることが多かったので、体力的にというよりはメンタル的に10分で十分なところがあったんですけど(笑)。今はある程度考えずにやれるところまできているので、30分出てもインテンシティが落ちないし、集中力を切らさずにやれるようになりました。まだまだなんですけど、あのころと比べるとゲームの流れも読めるようになって、チームが成功するように判断できるようになっていると思います。
──1年目は自分をアピールする時期で、昨シーズンは勝つためのプレーを心掛けたと言っていましたが、今シーズンはどのようなテーマを持っていますか?
ある程度のエゴを取り戻すというか。バスケットは5人でやるスポーツなので自分だけのことを考えていると勝てないですが、自分が任されている役目を果たすにはある程度のエゴが必要だと思っています。大学ではスタートで出て、ある程度活躍ができました。Bリーグに来てエゴを持ったままプレーしていたら、大学の時よりも難しい状況になっていたと思い、最初の1、2年目はある程度エゴを捨てて、いろいろなものを吸収しようと思ってやっていました。それで自分らしさがちょっとだけ犠牲になることはあったと思うんですけど、それで自分は良かったと思います。これからは自分らしさを取り戻して、新しく身に着けた経験と知識を使ってより良い選手になりたいです。
──これまでは抑えながらプレーしていたということですよね?
そうですね。でもそれはブレックスだと誰でもやっていることだと思います。例えばマコさん(比江島慎)でもジョシュ(スコット)でも、ただ自分がやりたいことをやっているわけじゃなくて、ある程度エゴを捨ててチームのためにプレーしている。だからブレックスは素晴らしいチームになっていると思うんです。
終盤にジョシュとかマコさんがボールを任された時はエゴを持ってやっていると思うので、その使い分けというか、いつセルフィッシュにやって、いつチームのためにやるのかというのを(安齋)竜三さんというかブレックスにいて学びました。いつかは『ゴー・トゥー・ガイ』になりたいですし、なれるくらいの才能は自分でもあると思っています。そこにたどり着くためには努力、経験、我慢が必要だと思っています。
「ディフェンスが武器になれば、もっとチームのためになる」
──ポイントガードの『ゴー・トゥー・ガイ』はスコアリングガードのイメージが強いです。今後はもっと得点に特化したガードを目指すということですか?
点が取れないガードはいらないと思うのでいつでもスコアできるガードにはなりたいですけど、点を取るとかアシストをするというよりはそれを判断するゴー・トゥー・ガイになりたいです。日本代表では八村(塁)選手や渡邊(雄太)選手が中心になると思うので、スコアリングガードにならなくてもいいと思います。ただ、点を取れないと意味がないので、そういうプレーヤーになるのが理想です。
もしカイリー・アービングが日本代表になったとしても八村選手や渡邊選手のベストプレーを引き出せるとは思わないですし、彼らを気持ちよくプレーさせるガードがいたらベストだと思っています。
ただ、オフェンスもすごく大事なんですけど、今までの日本はサイズの部分で物足りないところがあり、ディフェンスで苦労することのほうが多かったと思います。ディフェンスが武器になれば、もっとチームのためになるんじゃないかなって思っていて、そこも今年は集中しています。なので、ディフェンスにも注目してもらいたいです。
──最後にファンの方へメッセージをお願いします。
今後、自分のプレータイムがどうなるかは分からないですが、ケガ人がいる間に長く出て、やっと自分らしさをつかめたと思います。その感覚を忘れずに、チームのためにやりながら自分らしさを出して、ディフェンスでも流れを持ってくるきっかけを作れるように頑張っていくのでそこを見てください。チャンピオンシップにも関わってくると思うので、サンロッカーズ渋谷戦は2連勝して、3勝1敗で今シーズンを終わらせたいです。