文・写真=小永吉陽子

下馬評を覆した仙台、開幕から3勝1敗の好スタート

開幕から2週目を迎えたBリーグ。土日の両日で8000人を超す観客を迎えた仙台89ERSが、ホーム開幕戦で2連勝を飾った。2試合ともにレバンガ北海道を60点台に抑えるディフェンスが機能し、追い上げられても我慢に我慢を重ね、機動力を生かして石川海斗とディオン・ライトの得点で乗り切り、キャプテンの志村雄彦が要所でとどめを刺す戦いぶりで制した。

これで仙台は、開幕2戦目に千葉ジェッツに勝利してから3連勝。キャプテンの志村は勝因について、開幕ゲームである千葉戦での大敗(77-96)がチームに与えた影響が大きいという。

「小さい僕たちはディフェンスをやらなければ勝てないということを、千葉に大敗して気付きました。いや、そんなことは最初から分かっていたんです。でもNBLのチームと実際に戦って大敗したことで、全員の目が覚めました。僕らはこうしたギリギリの戦いで勝っていくしかないけれど、この戦い方を早いうちに出せたことはチーム全員の手応えにつながりました」

仙台は強豪が揃う東地区の中では、決して前評判は高くなかった。その理由は、外国人選手以外、すべてがミスマッチになってしまうほど身長の低いチームだからだ。160cmの志村雄彦と171cmの石川海斗がポイントガードを務め、170cmの佐藤文哉と184cmの片岡大晴がシューティングガードを務める。

地元宮城県出身者や地元の仙台高や明成高に通っていたメンバーがチームの顔となり、地域から愛され、大きな声援を受けているチームだが、千葉戦でも北海道戦でも、試合後に必ず聞かれていたのが、その身長のハンデについてだった。

間橋健生ヘッドコーチはそのたびにキッパリと言う。「高さがないことは気にしていません。逆に小さいことをストロングポイントにして、トランジションの速さや外からのペネトレイトとアウトサイドシュートを持ち味にして戦います。ハートの強い選手ばかりですから、Bリーグでも戦えると思っています」

確かに、仙台に敗れた千葉と北海道の両ヘッドコーチは「仙台の選手のエネルギーに負けた」と敗因を語り、間橋ヘッドコーチは「ディフェンスを修正できる我慢のメンタルゲームで勝った」と勝因を挙げた。

志村と石川の2ガードはあまりにも小さいが、ボールハンドリングとゲームコントロール力という点では、弱点を補って余りある魅力を持つ。仙台が勝利するには今後も我慢の展開を重ねていくしかないが、その戦いが早いうちに出せたことでチームカラーが定まってきた。強豪が揃った東地区の激戦に仙台が参戦できるかどうかに注目したいところだ。

石川海斗、第二の故郷である仙台で完全復活

ホーム開幕2連勝の立役者となったのが、今季から仙台に加入した石川海斗だ。ようやく『らしい』プレースタイルが戻ってきた。スピードと独特の緩急を持つドライブや、柔らかいシュートタッチが要所で火を噴いたのだ。

日本大4年時に右膝の前十字靭帯断裂の大怪我を負い、日立に入団後も再び同じ部位を痛めて再手術。その後、コートに立つものの完全復帰とは言えなかった。昨季はbjリーグの岩手ビッグブルズで中心選手となったが、仙台ではさらにタフになった姿を見せた。

「岩手ではケガをしないでシーズンを過ごすことができ、それまで思い切りできなかったゲーム感覚を取り戻すことができました。今はケガして以来、最高のコンディションになったと思います」。そう話す石川の加入は仙台に攻撃の幅を与えている。

これまでの仙台は志村のゲームコントロールがすべてだったが、絶対的にミスを犯したくない場面ではボールハンドリングのいい志村と石川の2ガードで戦い、状況に応じて2人をタイムシェアさせる戦いができるようになった。宮城の明成高校時代から相棒だったシューター、佐藤文哉へのパスがドンピシャリに出せる相乗効果もある。

その中でも石川の役割は積極的に攻撃をすること。北海道との初戦では隙をついてドライブを決めたかと思えば、相手がゾーンに変わったと同時に3ポイントを沈めるなど、ディフェンスがやられて嫌なことを次々に刺してダメージを与えていった。

「志村さんと2人で出たときはポイントガードが2人という意識で、僕自身は積極的にシュートを打つことを狙います。小さいことがマイナスだとは全然思っていません。スピードではどのガードにも負けないし、相手だってミスマッチを生かそうとすれば、普段やってない戦い方で崩れることだってある。これからはもっと連携を高めていって、高校3年間を過ごした第二の故郷である仙台で暴れたいと思います」

「日本人選手を育てる」ことを目標にシーズンに臨む北海道

開幕から1勝3敗。まだ戦うスタイルを見いだせない北海道にとっては苦しいスタートとなった。水野宏太ヘッドコーチは「非常にタフな2日間だった。仙台のエネルギーある戦い方に対して自分たちは力が出せず、チェンジングディフェンスを使ったが流れに乗り切れなかった」と敗因を語った。

今シーズンの北海道は「誰か一人や外国人選手に頼らないバスケを目指している分、もう少しチーム作りに時間がかかります」とも水野ヘッドコーチは言う。

その中でもチームの顔として育てていきたいのは、身体能力がある大型シューターの西川貴之。「今年はじめて日本代表に選ばれたこともあり、自分のパフォーマンスに責任を持ち、自分の色を出すシーズンにしてほしい。誰が見ても日本代表だという選手になってほしい」と今季の飛躍へ願いを込めた。

リーグ3週目を迎える来週。悪い流れを断ち切るべく、北海道は10月8日にホーム開幕戦を迎える。