東藤なな子

「私の得意な1対1は、今やっているバスケットのスタイルにマッチしている」

バスケットボール日本代表の東藤なな子は、チーム最年少として東京オリンピックに出場し、日本バスケット界初となる銀メダル獲得に貢献した。

東藤の強みは当たり負けしない激しいディフェンスだった。指揮官トム・ホーバスはディフェンスの強度を上げたい時に東藤をコートに送り出す起用法で、平均10.1分というプレータイムを与えることでその信頼を示した。

東藤自身、オリンピックを経験して「ディフェンスをしている時はフィジカルの差をあまり感じませんでした」と確かな手応えを得ているが、オフェンス面では違ったと言う。「オフェンスリバウンドの時の手の絡み方やドライブを守られた時の身体の強さでは、フィジカルの差を感じました。日本で吹かれていたファウルを吹かれなかったりして違いを感じることはありました。オリンピックでは高さや身体の寄せ方を学んだので、そこは今も意識しています」

オリンピックという大舞台でA代表デビューを果たし、世界を経験した東藤は、次は大会5連覇を目指して明日開幕するアジアカップに出場する。

アジアカップの出場メンバーは、日本代表を支えてきた髙田真希や町田瑠唯、宮澤夕貴などベテラン選手が外れ、平均年齢22.8歳とフレッシュな顔ぶれになった。今回のチームでも最年少となる東藤だが、東京オリンピックで先輩たちの姿を見て学んだことがある。

「苦しい時間帯に我慢する力や決め切る力は、経験がある選手が持っていると感じました。苦しい時間帯に決め切るメンタルもプレーの選択も、これからは課題になってくると思います」

東藤なな子

「相手の体制が整う前に攻める」

アジアカップ開幕を前に、女子日本代表の新たなヘッドコーチを恩塚亨が務めることが発表された。ホーバス前コーチと恩塚コーチでは、求めるバスケットが多少変わってくる。

それでも東藤は「私の得意な1対1は、今やっているバスケットのスタイルにマッチしていると思う」と大会前の強化合宿中の会見で語り、こう続けた。

「トムさんのバスケは一人ひとりの役割がはっきりしていて、自分だったらディフェンスや1対1でした。恩塚さんはいろいろなメンバーにオールラウンドなプレーを求めています。1対1もですし、3ポイントシュートも打てる時に打っていいので、自由度が高まったかなとは思います」

もともと東藤は、非凡なスキルと得点感覚を持つオフェンスが売り。高校時代はもちろん、トヨタ紡織サンシャインラビッツでもルーキー時代からクラッチタイムを任されるオフェンスでの勝負強さを発揮してきた。トランジションと3ポイントシュートを前面に押し出すホーバスの日本代表ではディフェンス専任という役回りだったが、東藤の本領発揮はこれからだ。

フォーメーションなどの違いはあるが、日本の強みがスピードであることは変わらない。東藤は言う。「日本の強さはトランジションバスケなので、切り替えの速さを生かして、相手の体制が整う前に攻めることを前提に、相手の高さを気にせずに戦いたいです」 東京オリンピックを経験して大きく成長した東藤が、このアジアカップでもさらに成長した姿を見せて、日本の5連覇達成に貢献する姿に期待したい。