キッドの自信「身体的にも精神的にも非常に良い状態にある」
マーベリックスの首脳陣は、東京オリンピックを終えたルカ・ドンチッチが帰国するタイミングでスロベニアを訪れ、彼の故郷で契約延長の会見を行った。フロントの面々がすぐにダラスに戻った一方で、新ヘッドコーチになったジェイソン・キッドはラトビアへと移動し、オフを過ごすクリスタプス・ポルジンギスと会っている。
7月下旬にポルジンギスはダラスでワークアウトを行っており、この時点でキッドとは一度会っている。「その時に『リガに会いに行くつもりだ』と伝えたのだが、彼は本当に私が行くとは思っていなかったようだ」とキッドは言う。
だが、キッドは同じ東欧とはいえ1000km以上の移動を苦にせず、ラトビアの首都リガを訪れて、数日間の滞在中にポルジンギスのオフの練習を見学して、何度か食事をし、たくさんの会話を交わした。「KP(ポルジンギス)がどんなところで暮らしているのか見てみたかった。家族にも会っておきたかった。家族のことを知れば必要な気遣いができる。私が彼とその家族のことを考えていることを、彼に知ってもらいたかった。バスケのことはもちろん、それ以外のことも話したかった。コート外での彼も知りたかった」
言葉だけでなく行動でも信頼を示す指揮官の姿勢を、ポルジンギスはうれしく思ったに違いない。
というのも、ポルジンギスが加入してからマブスは2シーズン連続でプレーオフ1回戦負けを喫している。ドンチッチという若き天才プレーヤーを擁しながら前進できないチームにおいて、ポルジンギスは戦犯扱いをされている。彼自身、この評価に納得がいかないのは当然だ。ケガを押してプレーしている事情もあるし、ドンチッチ最優先のバスケで自分が割を食っているという思いもある。今の彼の役割はドンチッチのためにスペースを作り、汚れ仕事をするのが第一。それでも勝てない責任を押し付けられて批判されるのだから、モチベーションを見いだせなくなっていてもおかしくない。
2015年の1巡目4位でニックスから指名された際、ほとんど知名度がなかったことでファンのブーイングを浴びたポルジンギスは、1年目から主力として活躍した。223cmのサイズがありながらボール扱いは巧みで、3ポイントシュートを打つことができ、オールラウンドな能力を持つスター候補として華々しいデビューを飾った。だが、アウトサイドシュートを打てるビッグマンはあっという間に増えて独自性は薄れ、相次ぐケガに悩まされるようになった。マブスで戦犯扱いされるようになったのも、高額年俸を得ているにもかかわらず、今後の伸びしろがないと見なされているからだ。
しかしマブスとしては、3年1億ドル(約110億円)という大きな契約を残すポルジンギスをトレードに出すのは簡単ではない。放出することなく、新たなモチベーションを与えて再び活躍させるのが最善の策だ。幸いにも今オフは、彼にとってNBAでプレーするようになって初めてケガのリハビリではなく、次のシーズンに向けた練習に打ち込むことのできる状態にある。キッドは「身体的にも精神的にも非常に良い状態にある。彼と一緒に戦うことができると思うと興奮するよ」と、ポルジンギスへの期待を語る。
リック・カーライルもそれに取り組んだが、上手くいかなかった。だが、キッドは少なくともこのシーズンはポルジンギス再生に取り組む。ポルジンギスはこれに応え、マブスを前進させられるだろうか。彼にとってはキャリアを左右する大事な1年となる。